・日本の食品ロス削減対策は進むが、日常の行動への定着は途上

・デンマーク発アプリは「お得とエンタメ」で社会課題を日常の楽しみに

・サステナビリティは社会性より「自分へのメリット」が鍵

食ロス対策は、なぜ「暮らしにうれしい選択」である必要があるのか

1)消費者にとっての価値へ翻訳が、社会課題の解決を広げる

食品ロス削減は、多くの人が身近に感じる社会課題のひとつだろう。

日本では、まだ食べられる食品が大量に廃棄されていることがたびたび指摘されている。企業や自治体による対策も進み、消費者の認知も以前より高まっている。しかしその一方で、食品ロス削減が日常的な取組みとして、十分に定着しているとは言い切れない。

この構図は、食品ロスに限った話ではなく、環境問題、地域活性化、健康づくりなど、多くの社会課題に共通して見られることだが、「重要だと思うこと」と「自分が実際に行動すること」の間に距離感がある。

従来、サステナビリティは「社会にとって良いこと」や「環境にとって正しいこと」として語られることが多かった。しかし近年の研究、たとえばTSR(Transformative Service Research:変革型サービス研究)では、それが消費者自身にとってどのような価値を持つのか、どのような暮らしや状態につながるのか、社会にとって良いだけでなく、「自分自身にも良い状態であるか」も重視されるようになっている。

これは、社会課題を社会課題のまま伝えるのではなく、消費者にとっての価値へ翻訳することが、結果として社会課題の解決を広げる可能性があるという考え方とも言えるだろう。

2)「社会に良いこと」を「暮らしにうれしい選択」へ翻訳する仕組みとは

こうした視点から見ると、食品ロス削減は非常に興味深いテーマである。

多くの人が「減らした方が良い」と考えている一方で、その実践には手間や心理的なハードルも存在する。だからこそ、消費者が自然に参加したくなる仕組みが求められる。

本稿では、デンマーク発のフードロス削減サービスで、日本国内で裾野を拡げている「Too Good To Go」の事例を手がかりに、社会課題を消費者のウェルビーイングへ接続する設計について考えていく。

単なる食品ロス削減の成功事例としてではなく、「社会に良いこと」を「暮らしにうれしい選択」へ翻訳する仕組みとして読み解くことで、これからのブランドやサービス設計への示唆を探る。