地震対策の裏目で生まれた「ゾンビ井戸」

この膨大な有害廃水のほとんどは、地下深くに再圧入することで処理されてきました。

しかし、この深層への再圧入が地層の圧力を変化させ、既存の断層を再活性化させてしまったのです。

その結果、それまで地震が非常に珍しかったテキサス州で、大学キャンパスのすぐそばからマグニチュード3クラスの地震が連続して発生し、大きな騒ぎとなりました。

2021年から2023年にかけては年間数百回もの地震が発生し、テキサス州がカリフォルニア州を上回る可能性すら報道され始めたのです。原因が石油・ガス採掘に伴う廃水処理にあることはもはや疑いの余地がありません。

そこで事業者と規制当局は、廃水の圧入先を深層から「浅い層」へと移す対策をとりました。

しかし、これがさらなる大惨事を引き起こします。

浅い層への圧入量を増やしたことで地殻の浅い部分の圧力が急上昇し、行き場を失った廃水が地表へ向かって間欠泉のように噴き出し始めたのです。

本来は役割を終えて死んでいるはずなのに、地下の圧力によって墓から蘇るように汚水を噴き出し、根本原因である廃水を止めない限り退治できない。

これこそが、この現象が「ゾンビ井戸」と呼ばれる所以です。

崩壊するケーキと、激化する法廷闘争

井戸の問題を発見した弁護士のサラ・スタグナー氏は、実際に現場で井戸を掘り起こしています。

本来は地下700メートルにあるはずの黒くて臭い原油が、新しい水平坑井からの過剰な廃水圧入によって押し上げられ、表層ケーシングの外側へ漏れ出しているのです。スタグナー氏は現状をこのように例えます。

「パーミアン盆地が一つの巨大なケーキだとします。有毒な廃水を、大量の水に慣れていない浅い層に注入した結果、無数のストロー(井戸)が突き刺さったケーキの中で圧力が逃げ場を探し、あちこちで崩壊や隆起を起こしています。層の間からクリーム(汚水や油)が漏れ出し、表にまで噴き出しているのが現状なのです」

状況の悪化を知りながら、石油大手や規制当局は責任逃れを試みていると批判されています。

アンティナ牧場の所有者アシュリー・ワット氏は、井戸の閉鎖処理が不適切で汚染への対応が遅いとして、石油大手シェブロンなどを提訴しました。

シェブロン側は疑惑を否定し、一部は閉鎖し直したが残りは立ち入りを妨害されたと反論。

裁判所はシェブロン側を支持してワット氏に制裁措置を科しましたが、ワット氏の主任弁護士ダニエル・チャレスト氏はシェブロンの井戸閉鎖方法は汚染漏れの根本原因に対処できていないと主張。「彼らが手抜き工事をした際には牧場から追い出しました」と語りました。