(ブルームバーグ):日本の長期金利が約30年ぶりの高水準まで上昇する中、社債市場の姿も変わり始めている。
金利上昇は発行体の資金調達コストを押し上げる一方、投資家にとっては債券など利回り商品の魅力を高める要因となるため、新たな資金循環が生まれつつある。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の野村憲彰デット・キャピタル・マーケット部長は、インフレ環境で企業はコスト削減ではなく、設備投資を通じて売上高の拡大を目指すようになっていると指摘。「それが社債市場の活況につながっている」と話す。
ブルームバーグのデータによると、2025年度の国内社債発行額は16兆7000億円と過去最高を記録した。集計方法はそれぞれ異なるものの、証券各社は26年度も前年度並みの発行水準になると試算している。
シニア債
地方銀行を含む日本の銀行は、調達コストが比較的低く、幅広い投資家層に販売しやすい普通社債(シニア債)の発行を進めている。
みずほ証券の小出昌弘キャピタルマーケット本部副本部長は、「銀行は企業向け貸し出し需要の拡大や自らの事業に必要な資金を確保するため、シニア債を発行している」と説明する。こうした動きは「過去に見たことのない水準」で、年間を通じて続くとみている。
調達手法
日本銀行による24年の金融政策正常化を受け日本が「金利のある世界」に戻る中、企業は合併・買収(M&A)や設備投資の資金調達手段を見直し、外貨建て債やハイブリッド債など、より幅広い調達手法を活用し始めている。
日本企業による外貨建て債の発行は着実に増えており、4-6月期の発行総額は約555億ドル(約9兆円)と過去最高だった前年同期(266億ドル)を大きく上回った。
SMBC日興証券の小田徳高デット・シンジケート部長は、「ドル市場は規模が圧倒的に大きく、そのメリットを生かすため海外で調達する企業が増えている」と指摘。企業活動のグローバル化に伴いドル資金への需要が高まっていると説明した。必要に応じて為替スワップを活用し、調達したドルを円に転換する企業もあるという。
一方のハイブリッド債は、負債でありながら資本性も備えるため、財務への影響を抑えながら資金を調達できる。みずほ証券の小出氏は、既発債の借り換え需要を背景にハイブリッド債の発行は前年度を上回ると予想している。また、これまでローンで調達していた資金をハイブリッド債に借り換える動きも見られると述べた。
超低金利下で姿を消していた変動利付債も、金利上昇とともに発行が増え始めるなど、資本市場では調達手法に変化の兆しが見え始めている。
投資家層
企業は個人投資家(リテール)向けの発行も積極化している。株式だけでなく債券にも資金を振り向ける家計が増え、リテール債への需要は底堅い。
みずほ証券の小出氏は、個人向け社債の発行拡大によって26年度の社債発行額が前年を上回る可能性もあるとの見方を示す。
三菱モルガンの野村氏は、金利の復活に伴い家計が預金から投資商品へと資金を移しており、個人向け社債への需要が高まっていると指摘。「金利のある世界になり、投資家層が広がっている」と話した。
さらに、企業や学校法人、宗教法人なども社債投資を増やしている。預金金利と比べ債券利回りの魅力が増す中、社債市場に再参入する投資家や、新たに社債投資を始める投資家も現れている。
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