「ヘビに気をつけてください。怒りっぽいので。足元にも注意を」――。
地面を掘り起こす現場の作業員が、緊迫した声を上げます。

井戸の表層ケーシングからは、気泡を伴った液体が明らかに漏れ出しています。

当初、問題のある井戸はせいぜい5本程度だろうと考えられていましたが、実際に地面を掘ってみると、毎回のように異常のある井戸が姿を現すのです。

「この仕事を引き受けた時、問題がここまで大きくなるとは夢にも思いませんでした」

関係者がそう吐露する不気味な現象が、アメリカ最大の油田地帯の足元で広がりつつあります。本来は死んでいるはずの井戸が蘇る、通称「ゾンビ井戸」の脅威です。

アメリカ経済を支える「巨大なケーキ」の代償

テキサス州のパーミアン盆地は、世界最大のシェールオイル生産地です。

この10年間、アメリカの石油産業と経済に革命をもたらしてきました。その規模は、OPEC加盟国であるイラクとクウェートの生産量を合わせたほどに匹敵します。

地質学的に見ると、この盆地は様々な岩石が何層も重なった「ケーキ」のような構造をしており、その層の間で油やガスが生成されます。しかし、この豊かな盆地には、極めて深刻な「水」の問題が隠されていました。

パーミアン盆地では、1バレルの石油を採油するごとに、3〜5バレルの廃水が産出されます。「水」と呼ばれてはいるものの、その実態は海水の5倍に達する塩分濃度を持ち、石油やガスの残留物、重金属、放射性物質などが混ざり合った極めて有害な物質です。