米国の自動車史上最大の失敗作として広く知られているのが、約70年前にフォード・モーターが発売した中級車ブランド「エドセル」だ。だが今、その不名誉な称号を米電気自動車(EV)大手テスラのピックアップトラック「サイバートラック」が引き継ぎ、21世紀のエドセルになる可能性が高まっている。

フォードのエドセルは1957年に発表された。馬の首輪(ホースカラー)にたとえられた楕円形のフロントグリルを特徴とし、全く新しいタイプの自動車として売り出された。同社は発売初年度に20万台を販売すると見込んでいたが、実際の販売台数は目標の3分の1にも届かなかった。そのデザインはやがてジョークの格好のネタとなった。

テスラは2023年、独特の角張ったデザインのサイバートラックの納車を開始した。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、同車を「テスラ史上最高の製品」と称賛し、需要次第では年間25万台超を生産できるとの見通しを示した。しかし、発売初年度の販売台数はその6分の1にも満たず、その箱形の外観は物笑いの対象となった。

エドセルの販売は年々落ち込み、フォードは1959年に販売を終了した。一方、サイバートラックの販売はさらに厳しい立ち上がりとなっている。S&Pグローバル・モビリティが集計し、ブルームバーグ・ニュースに提供したデータによると、米国で今年1-5月に登録された台数は7133台にとどまった。この登録台数は、スペースXがサイバートラックをまとまった台数導入していることなど、マスク氏が率いる他の企業による需要に支えられている。

テスラは決算資料でサイバートラックの販売台数を個別に開示していない。だが、CFRAリサーチの株式アナリスト、ギャレット・ネルソン氏は、サイバートラックはテスラにとって期待外れだったとみている。一方で、今後1-2年以内に生産終了が発表される可能性は低いとの見方を示した。

ネルソン氏は「販売のテコ入れを狙って、何らかのデザイン変更や別のモデルを投入する可能性はある。だが、そうした取り組みは徒労に終わるだろう」と述べた。その上で、サイバートラックは「おそらく自然に姿を消していくだろう」と予想した。

テスラはコメントの要請に応じなかった。

もっとも、自動車史でエドセルやサイバートラックだけが失敗作というわけではない。

1980年代初めには、ジョン・デロリアン氏がカモメの翼のように開くガルウイングドアを備えたステンレス製スポーツカー「デロリアン」を発売した。しかし、品質上の問題に加え、価格が当時の新車平均の2倍を超えていたこともあり、生産台数は約9000台にとどまった。

ゼネラル・モーターズ(GM)のポンティアックブランドが2000年に投入した中型スポーツタイプ多目的車(SUV)「アズテック」は、プラスチック製パネルをまとったボディーデザインが酷評され、発売からわずか数カ月でデザインの見直しを余儀なくされた。自動車市場調査会社エドマンズによると、販売台数はピーク時でも目標の7万5000台に対し37%にとどまり、GMは2005年に販売を終了した。

ただ、この2車種とも、エドセルやサイバートラックほど強気な販売目標を掲げていたわけではなかった。

マスク氏は長年にわたり、テスラ初のEVピックアップトラックへの期待をあおってきた。2019年には、映画「ブレードランナー」をイメージした演出でサイバートラックを披露し、「見せかけだけではなく、本当に頑丈なトラックが欲しいはずだ」と語った。最低価格を3万9900ドル(約651万円)に設定したことで、数千件の予約注文が集まった。しかし、予定より数年遅れて納車が始まる頃には、初期購入者向けの価格は10万ドルを超えていた。

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コックス・オートモーティブの業界インサイト担当ディレクター、ステファニー・ヴァルデス・ストリーティ氏は「サイバートラックは非常にニッチな商品だ。デザインの評価は大きく分かれる。価格も高い」と指摘した。

サイバートラックは生産当初から製造上の課題を抱えていた。ステンレス製ボディーは成形や溶接が難しく、度重なるリコールにも見舞われた。さらに、衝突事故後にドアが開かなかったとして、テスラは訴訟も起こされている。

マスク氏の政治活動も逆風となった。世界一の富豪である同氏は2024年の米大統領選で個人として最大の献金者となり、トランプ大統領を支持したことで民主党支持層の反発を招いた。さらに、政府効率化省(DOGE)を率いて連邦政府のプログラムや職員数を大幅に削減したことから、テスラの販売店では抗議活動が行われ、不買運動を呼びかける声も広がった。一部のテスラ車オーナーは保有車を売却した。特にサイバートラックはマスク氏のイメージと強く結び付けられるようになった。

マスク氏の政治活動が反発を招き、テスラの販売店では抗議活動が行われた

最終的に、エドセルの失敗でフォードは約3億5000万ドルの損失を計上した。現在の価値に換算すると約25億ドルに相当する。それでも現在では、その斬新さがコレクターに評価され、修復された車両には最大3万5000ドルの値が付く。

サイバートラックが将来どのような評価を受けるのかはまだ分からない。

エドマンズのインサイト部門責任者、ジェシカ・コールドウェル氏は「エドセルやアズテックと同様、サイバートラックの型破りなデザインは、従来型の実用性を重視する購入層ではなく、限られた愛好家層にしか受け入れられない運命にあった」と指摘した。

コールドウェル氏は、「サイバートラックは事実上、分断された世論を映し出す走る広告塔だ。市場で注目を集める一方で、それと同じくらいブランドへの反発も招いている」と述べた。

原題:Tesla Cybertruck Is Becoming the Ford Edsel of the 21st Century(抜粋)

--取材協力:Keith Naughton、Dana Hull、Kara Carlson.

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