マッチポンプ相場、ミニ・ゴルディロックス相場
6月1日の米国株式市場は、米国とイランの交渉に関するヘッドラインに振らされる展開となった。この日は、イランがイスラエルによるヒズボラ攻撃を理由に米国との協議を停止していると、イランの精鋭部隊「イスラム革命防衛隊」に近いタスニム通信が報じたことを受け、株価が下落する局面があった。その後、トランプ米大統領がSNSに「イランとの協議は急ピッチで続いている」(朝日新聞)と投稿したことや、イスラエルのネタニヤフ首相と電話で「非常に生産的な協議」(同)を実施したと発表したことを受け、市場のセンチメントは回復した。結果的に、3指数そろって株価は上昇した。
日中の株価は乱高下したが、最終的には上昇して終わり、全体としては堅調さが示された格好である。悪材料が出た後にそれが否定されることで、市場が楽観論を強めるというマッチポンプ相場的な動きは健在である。市場では、①イラン情勢はいずれ改善することが予想されること、②米経済は株高もあっておそらく堅調だと予想されること、③原油高が落ち着けばおそらく金利上昇も限定的だろうと予想されること、などが強気見通しにつながっているのだろう。インフレ率や金利水準はやや高めだが、いずれも高まり過ぎるリスクが低下しているため、「ミニ・ゴルディロックス相場」という状況なのだろう。雇用統計などデータを確認しながら、次の市場のテーマが(1)堅調過ぎる米経済による金利上昇懸念となるか、(2)実体経済の弱さによる悲観論の台頭なのか、(3)このまま不安定な「ミニ・ゴルディロックス相場」が続くのかを見極める必要がある。筆者は、夏ごろまでは(1)金利上昇のリスクがあり、その後は(2)実体経済の弱さが指摘されると予想している(雇用統計の悪化を予想)。
原油高が利上げ観測につながっている間は長期金利が安定的に推移
6月1日の米国債券市場は、米国とイランの交渉が難航する可能性が意識され、原油高によるインフレ懸念が強まった。もっとも、債券市場の反応は冷静と言える。長期金利は前日差+1.8bp、2年金利は同+2.9bpだった。長期金利よりも中期金利の方が大きく上昇したことからも示されるように、原油高に対する反応が(a)インフレ予想や長期金利の高まりではなく、(b)FRBの利上げ観測の高まりとなっている。実際に、長期金利の変化の内訳をみると、10年実質金利が前日差+1.0bpで、10年インフレ予想(BEI)が同+0.8bpとなっており、長期のインフレ予想は安定的である。10年BEIは4月には20bp程度上昇していたが、5月は10bp程度低下した。FRBがインフレの状況次第では利上げも辞さない姿勢を示していることから、インフレ懸念が抑制されているのだろう。雇用統計が大きく改善するようなことがなければ、インフレ予想や長期金利は制御された状態が続くだろう。