(ブルームバーグ):米経済の力強い勢いは米株投資家にとって諸刃の剣となっている。堅調な成長は企業業績の追い風となる一方、勢いが強まり過ぎれば恩恵は逆風へと転じる。
足元ではその傾向が鮮明だ。労働市場や小売売上高、地域の製造業に関する経済指標が市場予想を上回っても、投資家が積極的に株式へ資金を振り向ける動きにはつながっていない。
ロイトホルト・グループのストラテジストは、経済指標が市場予想をどの程度上回ったかを示すシティグループの米エコノミック・サプライズ指数とS&P500種株価指数の関係を分析した。同指数が現在のように40を上回る水準にある場合、一般的に経済の強さを示すとされるものの、その後3週間のS&P500種は下落し、その下げを取り戻すまで平均3カ月を要したことが分析で分かった。
この分析は、インフレを加速させ、それに伴う米連邦準備制度理事会(FRB)の強力な対応を招くほど景気が過熱することも、景気の勢いが鈍るほど冷え込むことも避けたいと考える投資家心理を読み解く一つの手掛かりとなる。
ロイトホルトのマルチアセット戦略ディレクター、チャン・ワン氏は「最近、特にここ2、3カ月は、好材料が株式相場の軟調につながるという市場の変化がはっきり見られる」と指摘。「良いニュースが悪いニュースになる」相場を生み出している要因はいくつもあるとの見方を示した。

エコノミック・サプライズ指数は年初からプラス圏で推移しており、最近では原油価格の下落も追い風となった。6月には2023年以来の高水準となる63を上回り、現在は50.3となっている。
シティが2003年に同指数を導入して以降、ワン氏の試算では、40以上となるような好調な経済指標が発表された局面は28回あった。その後21営業日にS&P500種が下落したケースでは、下げを取り戻すまで通常3カ月を要したという。
ワン氏によると、株式相場が軟調となっている背景には複数の要因がある。まず、市場予想を上回る経済指標が続いたことで、緊迫と緩和を繰り返す地政学リスクへの対応に追われていた投資家の不意を突いた可能性がある。
さらに、FRBは物価や失業率を極端な水準に振れることなく安定した成長を維持するという難しいかじ取りを迫られている。経済指標が今後も市場予想を上回れば、インフレ率を2%目標へと抑え込もうとする当局の取り組みは一段と難しくなる可能性がある。
エクスプローシブ・オプションズの創業者兼チーフストラテジスト、ボブ・ラング氏は「金融政策は来週から秋にかけて、インフレ抑制をより重視する方向へ転換する可能性がある」と述べた。
マホニー・アセット・マネジメントのケン・マホニー最高経営責任者(CEO)は、3月下旬以降に17%上昇した株式市場のバリュエーションを正当化するには、市場予想をやや上回る程度の経済指標では不十分だとの見方を示した。
同氏は電子メールで「最良のシナリオは既に株価へ織り込まれている可能性があり、堅調な経済指標がかえって株式相場の重しとなることもあり得る。ニュースの受け止め方は非対称的に変化している」と述べた。
ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティテュートでグローバル株式・実物資産部門を率いるサミール・サマナ氏は足元のS&P500種の軟調な動きについて、経済指標よりも、テクノロジー株やAI関連銘柄から資金が移る動きの影響が大きいとの見方を示した。
一方で、「底堅い経済指標を受け、一部の投資家はFRBが利上げに踏み切る可能性が高まったと受け止めている可能性がある」と付け加えた。
ワン氏は「良いニュースが悪いニュースになる」今回の相場で特に目立つ要因として、イラン戦争を挙げた。戦闘による「新たな不確実性」が過去のパターンとの最大の違いであり、原油価格やブレークイーブン・インフレ率にも影響を及ぼしていると指摘した。
その上で、投資家には慎重な姿勢を維持するよう勧めた。短期的な相場環境は「それほど悪くない」が、今回は従来と異なる状況にあるため、「今後は一段と慎重になる必要がある」と述べた。
ワン氏は「現在の株式市場は経済そのものと言ってきた。したがって、経済にとって最大のリスクは、資産効果を通じた株式市場だ」と指摘。「資産配分やリスク資産に対する姿勢は、中立的なアプローチを取るべきだ」と語った。
原題:Economic Momentum Flips From Blessing to Curse for S&P 500 Bulls(抜粋)
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