米国はドル高によってインフレ圧力を弱めるというカードが切りにくい
5月18日の米国債券市場は、前週に金利が上昇していた反動もあり、金利が小幅に低下した。もっとも、グローバルな金利上昇圧力は続いており、金利低下の材料は少ない。長期金利は前日差▲0.6bp、2年金利は同▲2.5bpだった。
賃金上昇率が鈍化している局面であることを勘案すれば、過度にインフレの高まりを懸念する必要はないだろう。しかし、このような結論に至るにはデータを確認する必要があり、やや時間がかかるだろう。また、コロナ後のインフレ局面のようにFRBが大幅な利上げを実施し、ドル高を通じて輸入物価を抑制するという方法が取りにくいことも、インフレ沈静化が早期には期待しにくい要因である。コロナ後のインフレ局面では、まだグローバルなインフレ率が低かったことから、日本など他の主要国が通貨安を受け入れる余地があった。
しかし、現在は当時のインフレ圧力が残る中、通貨安を回避したい国が増えている。日本では通貨安がインフレ懸念につながり、それが長期金利を押し上げ、米金利の上昇に波及している。これ以上のドル高は他国のインフレ懸念や財政懸念を通じて米金利の上昇につながってしまうと考えれば、米国だけ通貨高でインフレを克服することもできない。中間選挙というタイムリミットが迫る中、トランプ政権には厳しい状況だが、自然とインフレ懸念が落ち着くことを待つことしかできないだろう。
円金利の上昇は補正予算への懸念よりも、円安・原油高が背景か
日本では、ややタイミング悪く補正予算が編成される方向で議論が進んでおり、長期金利の上昇が懸念されている。ファンダメンタルズから考えると、すでに中立金利のコンセンサス予想と思われる1.5%を大きく超え、インフレ目標達成(2%)と潜在成長率の改善(1%程度?)を足し合わせた3%が近づいている。むろん、足元では高い名目成長率となっているものの、向こう10年間ずっと名目3%の高成長を続けるという見方が定着していると考えることは困難であり、長期金利はリスクプレミアムが上乗せされる形で上昇しているという見方が一般的だろう。リスクプレミアムというと、前述した補正予算の議論とセットで財政リスクプレミアムが真っ先に頭に浮かぶが、補正予算の肥大化に否定的な高市政権は、ある程度抑制的な予算案の作成を目指すだろう。むろん、予算編成の過程では様々な議論が生じるとみられるが、早期にガソリンや電気代・ガス代の補助に充てるためには、国会審議も最小限にする必要がある。
とはいえ、足元の金利上昇の主因は、補正予算ではなく円安と原油高だろう。円安圧力が弱まらなければ、日銀の利上げ観測は残る。また、エネルギー高が続けば、冬季の電力需要への対応として、第2次補正予算で対応が必要になるかもしれない。むろん、日銀が利上げをすれば円安圧力を弱めることができると予想される。しかし、結局は米国のインフレ懸念が落ち着くことを待つ必要があるだろう。
(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)