ホルムズ海峡の情勢が不安定なままである限り、米海軍は駆逐艦を同海域に通過させるごとに数百万ドルの追加コストに直面する。しかも、駆逐艦が通過するだけでは海峡の再開につながる見込みは薄い。

同海峡の通航は依然として危険を伴うため、艦船には戦闘機やヘリコプターが随伴し、追加の監視措置も講じられている。

7日夜には同海峡を航行していた米軍艦船3隻がイランによる攻撃を受けた。このように艦船が自衛を余儀なくされれば、1発当たり最大600万ドル(約9億4250万円)のミサイル使用が必要になるなど、費用はさらに膨らむ可能性がある。

運用コストの多くは本年度の国防予算で既に賄われているものの、商船を繰り返し護衛すれば、さらに数十億ドルが必要になる見通しだ。国防総省は、今回の紛争費用がすでに250億ドルに達したとしているが、この数字は過小だとする見方もある。

元米海軍大佐で、現在は戦略予算評価センター上級研究員を務めるセイン・クレア氏は、米海軍の艦船通過だけでは、ペルシャ湾に足止めされている1500隻余りの商船の通航再開につながるわけではないと話す。

「2回の通過で海峡の安全性が大きく高まるとは思わない。実際、米軍艦がイランの攻撃を撃退しなければならなかった事実は、護衛のない船舶が引き続き持続的な脅威にさらされることを示している」と同氏は述べた。

また、こうした脅威への対処は、中国やロシアなど一段と強力な相手を想定した高性能の防空・ミサイル防衛兵器の備蓄を消耗させると指摘した。

「プロジェクト・フリーダム」作戦の一環として実施された米国のホルムズ海峡通航では、駆逐艦2隻、航空機約100機、兵員1万5000人、各種ドローンが投入された。ヘグセス国防長官、およびケイン統合参謀本部議長が明らかにした。

米中央軍によると、7日には米駆逐艦3隻が同海峡を通過し、攻撃を受けた。

駆逐艦の運用コストは1日当たり約60万ドル。航空機の運用費は飛行時間1時間当たり数千ドル規模に及ぶ。国防総省はコストを公表していないが、予算資料に示されている他機関向けの料金では、C-130J輸送機が1時間約4500ドル、B-1B爆撃機で約8万5000ドルとされる。戦闘機や偵察機、爆撃機、ヘリコプター計100機を8時間運用した場合、費用は約1000万ドルに達する。

イランのミサイルが防御をすり抜けて艦船に命中するリスクに加え、ペルシャ湾への出入りを伴うこうした任務が数百回に及べば、費用は急速に数十億ドル規模に膨らむ。ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の防衛担当、ベッカ・ワッサー氏はこう分析する。

またマサチューセッツ工科大学(MIT)のケイトリン・タルマッジ氏は、軍艦の通過を繰り返すだけではホルムズ海峡の状況は変わらないと話す。

海峡再開の現実的な手段は、イランが通過船舶の攻撃に使う地域を制圧するか、解決策を交渉するかに限られるが、いずれも代償を伴う。

「軍事力による強行策で海峡を再開させる有効な選択肢はほとんどない。もしあれば米国はすでに実行しているはずだ」とタルマッジ氏。「戦争が終結しない限り、商船は安心して海峡を通航できないが、それは軍事ではなく政治的な結末だ」と指摘した。

原題:US Navy’s Hormuz Transits Cost Millions as Strait Still Closed(抜粋)

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