アサド政権の徴兵制を肯定? 裁判での国側の主張とは
入管当局は2020年1月、難民不認定処分を出した。モハメドさんは不服として2次審査を申し立てたが結論は変わらず、翌21年5月、不認定処分取り消しと難民認定の義務付けなどを求めて名古屋地裁に提訴した。
2011年以降、国民への弾圧を強めるアサド政権に対し、日本は欧米各国と共に経済制裁を実施してきた。しかし、裁判で国側は、非人道的な行為を理由に制裁しているはずのアサド政権の徴兵制を肯定するかのような主張を展開した。
・難民条約の定義に従えば、兵役忌避は、刑罰を科される恐れがあったとしても、「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会集団の構成員であること、または政治的意見」に基づく迫害ではないから難民に該当するとは言えない。
・シリアにおいて国民の義務である兵役が課され、義務を履行しないことに対し刑罰が科される恐れがあること自体は、(難民条約上の)迫害を受ける恐れに該当しない。
・シリアでの兵役忌避に対する罰則は、1か月から最長5年の懲役、所在不明の国外脱出による招集忌避の場合は3か月以上2年以下の禁固刑および罰金で、不当に重いとまでは評価できない。
驚くのは次の主張だ。難民審査に不可欠なモハメドさんの出身国情報、つまりアサド政権の強権政治がまったく無視されている。
・原告は、兵役忌避者が最低限の訓練しか受けないまま前線に配備されることが不当な取り扱いと主張するが、戦争中の国にあって、かつ兵士が不足している場合に、これは特段不合理なものではなく、不当と言うよりもやむをえない措置である。
また、モハメドさんが迫害を受けたと訴える個々の事実については、「裏付ける客観的証拠がない」「供述が変遷している」などと否定して「信用性に疑義がある」と反論した。