日本の人口減少ペースは速く、少子・高齢化が急激に進んでいる。2025年5月1日現在の総人口は1億2334万人に減少した。
内訳は、日本人人口が1億1969万人と前年から▲94万人減(▲0.78%)、外国人人口が365万人と同+34万人増(+10.27%)となった。
国立社会保障・人口問題研究所の予測では、日本の人口は、2070年に8700万人まで減少すると予想されている。
人口減少によって課題が山積している。経済活動を支える生産年齢人口(15歳~64歳)の減少が、労働力不足や経済規模の縮小に繋がる可能性が高まっている。
また、少子・高齢化が急激に進むことで、年金や医療などの負担が拡大し、社会保障制度の維持が困難になるリスクがある。さらに、地方で若年層の減少や高齢化が進むことで、過疎化が進み、地域経済が衰退、コミュニティの維持が困難になる恐れがある。
財政面では、人口の減少によって経済成長率が低下すれば、税収が減少する一方、高齢化社会に対応したインフラ整備や街づくりなどへの支出によって、財政赤字が拡大する可能性がある。
安全保障面では、自衛隊の担い手が減少するほか、財政面から軍事装備品などの不足に繋がる恐れがある。日本は、中国、ロシア、北朝鮮など権威主義国家と隣接しており、日本の経済力や軍事力が一段と低下すれば、安全保障面でのリスクが高まりかねない。
人口の減少を抑制するために、合計特殊出生率を上昇させる政策がとられているが、効果が顕在化するか否か不透明な状況が続くとみられている。
このような政策を強化するなかで、日本への外国人受け入れを増やす政策も進められている。米国社会の移民政策を反面教師として、日本への示唆を考える。
米国は不法移民の放置を一因として分断化を招いた
①米国は移民で人口増加継続
米国では、合計特殊出生率(一人の女性が一生の間で生む子どもの平均数)が22年に1.67と人口の維持に必要な水準である2.1を下回っているものの、人口は自然増(出生者-死者数)と移民の増加によって拡大を続けている。
しかし、トランプ政権2期目では、国境警備の強化、亡命申請の制限、一時保護資格の停止、米移民・税関捜査局(ICE)による拘束・強制送還の増加といった対応を取ってきた。
これらの政策を受け、CBO(議会予算局)による最新の人口予測(25年9月)は下方修正された。ただ、抜本的な移民制度の変更は不可能との見方から、移民の増加が続き、米国の人口増加を支え続けると予想されている。
ただし、純移民を除く人口を示す自然増減は2031年に減少に転じ、人口の増加ペースは大幅に鈍化すると推計されている。
②米国では少子高齢化問題を移民で対応もミスマッチ
米国では、子どもを持つ世帯の税負担を軽減するような制度はあるが、移民の流入によって人口増加が続いているため、合計特殊出生率を引き上げるような政策の優先順位は高くない。
移民は、平均年齢が若いため、労働供給の拡大や米国の年齢構成の若返りに貢献し、潜在成長率を押し上げ、経済成長を支えてきた。
米国での永住権(グリーンカード)の取得は、全体として条件が厳しいが、学業や就業機会などが多いため、米国への移民希望者は多い。
米国の永住権の主な取得方法として、a)家族ベース、b)雇用ベース、c)多様化プログラム、d)人道・その他がある。
一般的な就労ビザ経由での永住権取得は、時間がかかるが、米国籍者との結婚、国内外で認められた非凡な能力の保持者(科学、芸術、教育、ビジネス、スポーツ分野)、国益免除 (National Interest Waiver: NIW) に該当するほどの卓越した能力・実績を持つなど特定の資格を満たしていると、永住権取得の手続きが迅速に行われる。
これらの移民政策では、未熟練労働者の許可人数が限定的なため、不法移民の増加の一因となっている。
a)家族ベースでは、米国籍の親族、または永住権保持者である親族から請願する。
米国籍者の配偶者、米国籍者の21歳未満の未婚の子供(米国籍の親が外国籍の子供を請願)、米国籍者が21歳以上の両親(米国籍の成人した子供が外国籍の両親を請願)、米国籍者の寡婦・寡夫。これらは年間の発給数に上限がない。
一方、米国籍者の21歳以上の未婚の子供、米国籍者の既婚の子供、米国籍者の兄弟姉妹、永住権保持者の配偶者・21歳未満の未婚の子供、永住権保持者の21歳以上の未婚の子供。これらには、年間22.6万件の制限枠がある。なお、米国籍者の外国籍の婚約者は、非移民ビザで入国後、米国籍者と結婚することで、米国籍者の親族となってから、永住権を申請する。
b)雇用ベース(Employment-Based:EB)では、米国経済に貢献できる技能、能力、資金を持つ外国人に永住権を与える。
特定の職業、能力、投資など5つに分類(EB1-5)され、永住権を申請する。通常、米国の雇用主による請願が必要。件数は、年間14万件となっている。
雇用に基づく第1優先(EB-1:Employment-Based First Preference)では、科学、芸術、教育、ビジネス、スポーツ分野での国内外で認められた非凡な能力が証明された人。
また、著名な教授・研究者で、特定の学問分野で国際的に認められ、3年以上の教鞭または研究経験があり、大学や研究機関での恒久的な研究職・教育職に就く必要があるもの。
さらに、多国籍企業の管理職・役員で、請願書の提出前の3年間で少なくとも1年間、米国以外の関連会社で管理職・役員として勤務していた実績があり、米国でも同様の役職に就くことが条件となる。
第2優先(EB-2)では、 高等学位(修士号など)を持つ専門家、科学・芸術・ビジネスにおいて卓越した能力を持つ者、高度な能力を持つ研究者や起業家などが利用することが多い国益免除 (National Interest Waiver:NIW) の対象者。高度な専門知識や能力を持つ人々が対象。
第3優先(EB-3)では、 熟練労働者(2年以上の経験を要する職)、専門職(学士号を要する職)、その他の労働者(非熟練労働者)。雇用主のスポンサー、労働証明が必要。
第4優先(EB-4)では、宗教関係者、特定の国際機関職員、特定の退役軍人、特定の政府職員など。
第5優先(EB-5)では、投資家が対象。米国内の企業に一定額以上(通常の非ターゲット雇用地域で105万ドル、ターゲット雇用地域で80万ドル)を投資し、10人以上の米国人フルタイム雇用を創出、維持しなければならない。
c)多様化プログラムとして、過去5年間に米国への移民が少ない国の人々を対象にコンピューターによる無作為の抽選が毎年1回、特定の期間(通常10月~11月上旬)に行われる。
対象国で、出生し、高校卒業以上の学歴、または特定の職業経験(直近5年間で2年以上の訓練を要する職業)が応募資格となる。
d)人道的・その他の方法。米国で難民・亡命者として認められれば、一定期間後に永住権を申請できる。また、犯罪被害者、人身売買被害者に対する特別ビザなどから、永住権へ切り替えられる。さらに、米国での長期居住者。
以上のように、米国の移民政策は、高技能を持つ専門家、家族関係に基づく移民を優先する制度になっている。EB-3で、未熟練労働者を受け入れる枠はあるが、年間1万人にとどまる。
季節要因など一時的な未熟練での労働力不足を補うために、一時就労ビザ(H-2Bビザ)という非移民ビザがある。対象は、農業以外のホテルやリゾートの季節従業員、造園業者、建設作業員など。
雇用主は、米国内に適切な労働者がいないこと、外国人労働者の雇用が国内労働者の賃金や労働条件に悪影響を与えないことを証明する必要があるうえ、年間発給数の法定上限は6.6万件と少ない(議会の承認によって上限の限定的な引き上げが可能)。
H-2Bビザ発給のために、雇用主が米労働省に「外国人労働者受入証明」を提出する。2021会計年度に申請された労働者の総数は、約18万人だったが、ビザの発給は約11万人にとどまった。
2022会計年度は、申請労働者総数が約26.8万人に対して、ビザの発給は約14.7万人にとどまった。2023会計年度は、申請労働者総数の約21.5万人に対して、ビザの発給が約13.2万人にとどまった。
毎年のように、必要な数のビザが発行されず、建設業、ホスピタリティ産業、清掃業などでの労働力不足に対応できておらず、不法移民滞在が黙認される結果となってきた。
