「量」の拡大から「質」の管理

2025年夏の参院選後、政治環境に大きな変化が生じた。自民党が衆参両院で過半数を割っただけでなく、与党連立の枠組みも変わった。この変化は外国人政策にも影響を与える。

2025年10月21日に発足した高市政権は、外国人問題への取り組みを看板政策の1つに掲げ、従来の「積極的」受入れから、一定のルールや管理のもとで受入れる「秩序ある」受入れに方針を転換している。

こうした背景には、外国人の急増に対して国内の受入れ態勢が追いつかず、これに関連した課題が顕在化して来たことに加えて、与党の枠組みが日本維新の会との連立に変わり、外国人政策の優先課題が制度の適正化や厳格化にシフトしてきた影響も大きい。

実際、自民党・日本維新の会の「連立合意書」には、外国人に関するルール強化や法規制の整備が盛り込まれている。今後の外国人政策は、この基本方針に沿って進むことが見込まれる。

トップダウンの推進体制

高市政権の特徴の1つは、強力なトップダウン体制にある。とりわけ、看板政策の外国人政策については、首相の指導力がダイレクトに発揮される体制が構築された。

第1に、人事面では外国人政策を担当する2つのポストが新設された。

1つは、外国人政策を担当する首相補佐官。首相の意思決定を政策に落とし込むパイプ役を担う。そして、もう1つが外国人政策担当大臣(外国人との秩序ある共生社会推進担当)。外国人政策全体の責任を負う主体であり、国民への説明責任や広報の役割を担う。

これに加えて、法務大臣が出入国管理・在留管理・難民認定などの運用を統括し、法規制の見直しや法執行を強化する体制が図られている。

第2に、政府内・省庁間の意思統一を図る場として、以前からあった「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」が再編された。

名称に「秩序ある」との文言が加わったことは、制度適正化に政策の重点がシフトしたことを示唆している。この会議体で省庁間の利害を政治レベルで調整し、政府として一体的な行動が取れるようにしている。

第3に、政策実行組織として、内閣官房に創設された「外国人との秩序ある共生社会推進室」がある。

同室は、石破政権下で新設された組織であるが、当初から約80名体制で発足し、省庁間で潤滑油的な役割を果たすだけでなく、実務面を総合調整していく役割も担う。

外国人政策は、法務省・経済産業省・総務省・厚生労働省・警察庁など様々な省庁が絡む横断的な分野であるため、効果的に施策を実施していくためには、関連省庁が連携して動くことが重要になる。

さらに、自民党内では、高市総裁直轄の「外国人政策本部」を新設し、政府と党が連動しながら迅速に意思決定できる体制が整えられている。

本部内には、①出入国管理、②制度の適正化、③安全保障と土地法制を議論する3つのプロジェクトチームが設けられ、同時並行で議論を進める枠組みが用意されている。

「適正化」と「共生」の両輪

今後、実施・強化される見込みの施策には、外国人急増に伴い顕在化した課題が並ぶ。

すでに実施段階にある「不法滞在者ゼロプラン」(2030年末までに不法滞在者を2024年末比で半減させることを目指す取り組み)や「外国運転免許証切替(外免切替)制度」の見直しなどは、施策の実効性を高めるために運用面を強化し、検討が進む帰化要件の見直しや在留資格審査の厳格化などでは、制度の穴や緩みを修正する対応が進められる。

とりわけ、連立合意文書に記載された「外国人不動産取引規制」「人口戦略」の2点については、来年本格的に議論される予定であり、政策の方向性に大きな影響を与える論点となる。