1|外国人不動産取引規制

外国人不動産取引規制については、安全保障上の重要施設周辺の管理や、住宅価格高騰への対応として見直しが検討されている。

現状、国内における外国人の不動産取引に規制はほとんどない。2022年に重要土地等調査法が施行され、防衛関係施設や原発、国境離島などの安全保障上重要とされる区域の不動産取得は、届出義務などが課されることになったものの、国籍を条件とした規制とはなっていない。

同法には、施行から5年後に必要に応じて見直すとの規定があり、通常であれば2027年が該当年となるが、それを待たない形で検討が始まっている。

また、住宅政策の観点からは、都市部を中心に住宅価格や家賃が高騰し、若年層や低中所得者層の住宅購入が難しくなっていることが社会問題化している。

諸外国では、コロナ禍以降、外国人や外国企業による不動産購入に規制をかけて、追加の税負担を課すなどの措置を時限的に導入する動きが見られる。

国内でも外国人による不動産取引の実態調査が始まっているが、日本は世界貿易機関(WTO)加盟時に「外国人による土地取得制限の権利」を留保していないため、国籍を根拠とした規制を行うには国際法上の制約がある。そのため、制度設計には慎重な検討を要することになる。

2|人口戦略(総量規制)

人口戦略では、外国人受入れの「総量規制」の可否が焦点となる。日本維新の会は、夏の参院選で「外国人比率を可能な限り低く抑えること」を基本方針とし、日本人口全体に占める外国人の割合に上限を設ける「総量規制」の導入を公約として掲げてきた。

総量規制は、外国人全体や分野ごとの受入れ人数に上限を設定し、その枠内で管理する仕組みである。

これに近い概念として、その枠内で分野別や地域別に割り当てるクオータ制があるが、日本でクオータ制に近い仕組みと言えるのは、5年間の受入れ見込数を設定している特定技能1号だけである。

日本は少子高齢化・人口減少という課題を抱え、これまで外国人労働者や高度人材の卵である留学生を積極的に受け入れてきた。

仮に、総量規制の導入が検討される場合には、対象範囲、上限の設定方法、産業政策との整合性、具体的な運用面の設計など、多岐にわたる論点が出てくることになる。

これが特定技能のようなレンジ管理に留まるのか、さらに踏み込んだ上限管理となるのか、検討の行方が注目される。

「排外主義と一線を画す」ための共生政策

高市首相は外国人政策を語るとき「排外主義と一線を画す」と繰り返し強調してきた。これには、制度の厳格化が外国人排除を目的とするものではなく、治安や社会統合の観点から制度整備や運用の透明性を確保する措置であると明確化に示す意図がある。

しかし、それを具体的に示すには、適正に受け入れた外国人を日本社会に包摂し、相互に尊重していく多文化共生の取り組みを、外国人政策の両輪として重視することも重要になる。

これに関しては、来年1月にも外国人との共生に向けた総合的対応策を改訂する見込みである。

また来年度は、国の目指すべき外国人との共生社会のビジョンや、その実現に向けた中長期的な課題・施策を示した「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」実施期間の最終年にあたり、次期ロードマップの策定に向けた議論が始まると思われる。

現在のロードマップでは、日本語教育や相談体制の充実、ライフサイクルに応じた支援体制の構築などに力点が置かれているが、次期ロードマップではこれまでの論点に加えて、差別や偏見の解消、オーバーツーリズムへの対応などの論点に注目が集まることが予想される。

日本の外国人政策は、これまで「受入れ拡大」にアクセルを踏み続けてきたが、今後はスピードを緩めて、国内の「受入れ体制を再構築」するフェーズに移る。

その際には、規制と共生、社会と経済、国と地方など、様々なバランスを動かすことになる。このバランスを適切に保つことができるのか。高市政権の手腕が問われることになる。

※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 総合政策研究部 准主任研究員 鈴木 智也

※なお、記事内の「図表」と「注釈」に関わる文面は、掲載の都合上あらかじめ削除させていただいております。ご了承ください。