(ブルームバーグ):米投資ファンド、エリオット・インベストメント・マネジメントは、トヨタ自動車グループによる豊田自動織機の非公開化を阻止しようと動いている。一見すると、エリオットが圧倒的に不利な立場にあるように見えるが、豊田織機の株主構成を子細に分析すると、勝機も見えてくる。
トヨタグループは源流企業と位置付けられる豊田織機株の約48%を既に保有しており、豊田織機の多くの株主と深い関係を持つ。一方、エリオットはわずか約6.7%しか保有していない。特別決議の拒否権を得るために必要な33%超からは大きくかけ離れているが、別の見方を提示する識者もいる。
20年以上にわたり日本株やアクティビズムに関わってきた独立アナリスト、トラビス・ランディ氏は、エリオットが勝利するために必要な議決権は、あと7%だけで済むかもしれないと指摘する。
インデックスファンドや上場投資信託(ETF)の一部として豊田織機を保有するパッシブ投資家が議決権の約19%を占めており、足元の市場価格を下回る1株1万8800円の提示価格では売却しないだろうと予測しているからだ。
エリオットに軍配が上がった場合、アクティビスト(物言う株主)を勢いづかせることは間違いない。親子上場や持ち合い株の解消を求める動きがますます広がる可能性もある。

「この取引は阻止され得る方向に向かっている」。ランディ氏はこう主張する。エリオットの保有分や、株式公開買付け(TOB)期間が終了する2月12日までに買い増し得る分、他の投資家が持つ分などを勘案すると、1万8800円でTOBが成立する可能性は低いと述べた。
今回のTOB案件は巨額だ。トヨタグループの提案は豊田織機の企業価値を6兆1000億円と評価。4兆3000億円のTOBを通じて自分たちが保有していない豊田織機株を取得しようとしている。これは日本における同種の取引としては最大規模の1つとなる。買収に関連する別の取引を含め、豊田織機の非公開化には5兆4000億円の費用がかかるとトヨタグループは試算している。
エリオットは、公式声明以外のコメントは差し控えている。トヨタ不動産は現時点での応募状況については回答を控えるとした上で株主の理解を得られるよう、引き続き丁寧な説明を続けていくとした。豊田織機は株主と引き続き真摯な対話を継続していくと述べたが、トヨタからは現時点でコメントを得られていない。
エリオットはTOB期間中の豊田織機に対して対抗TOBも視野に入れていると、日経新聞が28日に報じた。対抗TOBや株式の買い増しなどを通じて、トヨタグループによるTOBに応募しない投資家を増やしたい考えだという。また、エリオットの豊田織機株保有比率はさらに増えている可能性があるという。

エリオットは昨年11月に豊田織機の株式取得を明らかにして以来、トヨタグループに対し圧力をかけることで買収提案価格の15%引き上げという成果を既に上げている。しかし、同ファンドは豊田織機の1株純資産価値は1株あたり少なくとも2万6000円の価値があり、同社が独立企業として存続すれば短期間で4万円まで上昇する可能性があると主張。他の投資家に対してトヨタグループの提案を拒否するよう働き掛けを続けている。エリオットは27日、取引に反対する根拠を52ページにわたるプレゼンテーションで発表し、キャンペーンを強化した。
ランディ氏によれば、トヨタグループが市場価格を上回る買収価格を提示しない限り、パッシブ投資家が自社株を売却しないことは「まず妥当と思われる仮定」だ。市場価格を下回る価格で売却すると、より広範な株価指数に連動する投資成果を目指す必要のあるパッシブファンドの運用者にとって「非対称的なダウンサイドリスク」が生じる、とランディ氏は述べた。
豊田織機の株価は、修正後の買収提案以来、トヨタグループが提示したTOB価格を上回って取引されている。29日は一時前日比0.9%高の1万9760円まで買われ、ブルームバーグの記録に残る1974年9月11日以来の最高値を更新した。

ランディ氏によれば、豊田織機のパッシブ投資家には米資産運用会社ブラックロックなども含まれ、エリオットの議決権を26%程度まで引き上げることができるという。ブラックロックはコメントを控えた。
一方、ランディ氏はトヨタグループ陣営は株式持ち合いなどを考慮すると、豊田織機の議決権の約55%を確保しているようだとも指摘する。トヨタグループが反対株主を締め出すスクイーズアウトをするためには議決権の3分の2以上の賛成が必要だ。
それでも、国内で最も由緒がある企業集団で、各界に強い影響力を持つトヨタグループを打ち負かすことは、多くの人が困難な課題だと見ている。
みずほ証券の菊地正俊チーフ株式ストラテジストは「トヨタグループに逆らってもしょうがないと思う投資家も多いと見られる」と述べた。エリオットなどの株主は価格に異議を唱えるかもしれないが、この取引は依然として成立する可能性が高いと同氏は述べた。
豊田織機の株主には、日本の公的年金基金、メガバンク、大手保険会社などが名を連ね、その多くは株式の持ち合い関係にある。
ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生シニアアナリストは株価が提案価格を持続的に上回らない限り、こういった機関投資家はトヨタグループのTOBに応じる可能性が高いと述べた。
ただ、トヨタグループの提案に難色を示すのはエリオットだけではない。
英国のアクティビスト、アセット・バリュー・インベスターズ(AVI)の日本調査責任者、坂井一成氏は「価格の引き上げ幅は適正とは到底言いがたい」と述べた。ブルームバーグのデータによると、AVIは豊田織機株約0.07%を保有している。坂井氏は保有株について、TOBに応募するか言及を避ける一方、少なくとも1株当たり2万5000円以上が「最低限適正な評価額」だとの見方を示した。
(8段落目のトヨタ不動産の社名の表記を訂正します)
--取材協力:堤健太郎、Lisa Du、稲島剛史.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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