育児休業の取得がワーキングマザーのキャリアリスクになっている現状
子どもを産み育てながら働き続けるために、育児休業制度は欠かせない。
実際、正社員として就業する女性のうち、第一子出生者の約7割が、育児休業を取得して就業を継続している。
一方で、育児休業を取得したために昇格が遅れたり、復帰時に職務内容を変更されるなど育児休業の取得がワーキングマザーのキャリア形成に大きく影響を及ぼす。
育児休業取得によるキャリア上のリスクを最小限に抑え、早期に活躍できる社会を実現するためには、どのような対策が必要だろうか。
このような問題意識の下、企業の制度・支援策を中心に、育児休業の望まない長期化を防ぐための自治体による支援や夫婦間での協力についても合わせて検討する。
育児休業者の原職復帰に「配慮」以上の対応を
育児休業をキャリア上のリスクとしないために、企業にはどのような制度や支援策が求められているだろうか。
育児休業は、子どもが1歳になるまで(保育所に入所できない場合は2歳まで)取得できることが法律で定められているが、従業員1,001人以上の企業のうち36.4%は、2歳以降も育児休業を取得できるなど、法定水準を上回る制度を設けている。
しかし、制度がいかに充実していても、復職後の配置や評価の在り方次第では、育児休業が依然としてキャリア上の不利として作用する可能性がある。
そこで以下では、キャリア形成にとりわけ大きな影響を及ぼすと考えられる、①復職後の人事配置、②昇進・昇格に関わる人事評価の二つの視点から検討する。
現行の育児・介護休業法では、育児休業から復帰する労働者について、「原則として原職又は原職相当職に復帰させるよう配慮する」ことが企業に求められている。
「原職相当職」とは、①休業後の職制上の地位が休業前より下回っていないこと、②休業前後で職務内容が異なっていないこと、③勤務する事業所が同一であること、のすべてを満たす場合とされている。
原職復帰が叶わなかった背景としては、復帰時に原職ポジションに空きがなかったことや、「管理職になるにあたって他部門を経験させる」という会社の慣習が優先されたことが挙げられる。
育児・介護休業法では、減給や降格など育児休業取得者にとって不利益となる扱いは禁止されているものの、職務内容についての原職復帰はあくまで企業側の「配慮」にとどまり、法的拘束力を有しない。
そのため、ポジションの空きがないなどを理由に、原職復帰がかなわない事例は少なくないと考えられる。
一方で、保育所に入所したばかりの子どもは高い頻度で体調不良になりやすく、また子育てのために残業が難しいなど、復職直後の安定した就労は決して容易ではない。
こうした状況下で新たな職場に配置され、早期に成果を求められることは、通常の人事異動と比べても、より大きな負担を伴うといえる。
原職復帰の利点として、育児休業前に築いてきた人間関係を生かし、円滑に職場復帰できる点が挙げられる。
たとえば、数年ぶりの職場復帰となる場合、ビジネス上の会話スキルやパソコン操作スキルの回復に時間を要することもある。
さらには社内システムや規定など職場環境が大きく変更されていることも少なくないが、よく知る人が身近にいることで気軽に質問でき、早期のキャッチアップが可能となる。
そのような育児休業復帰直後の状況を踏まえると、原職復帰には現行制度で「配慮」と位置付けられている範囲にとどまらず、きめ細やかな対応が求められる場合がある。
育児休業復帰者のみを特別に優遇すべきではないものの、組織全体の生産性や人材活用の観点からみても、復帰後の円滑な業務遂行や早期の活躍を促すためには原職復帰が望ましい場合は多い。
そのため、育児休業取得者の復帰後のキャリアを十分に見据えないままポジションを欠員補充することを避け、原職復帰を前提とした人員配置の工夫を行うことが重要である。
ただし、育児休業取得者の欠員補充をしない場合には、カバーする同僚の業務負担が増してしまい、不公平感や両者の分断につながりかねない。
それを防ぐため、業務の一部を外部へ委託したり、業務効率策を施したり、負担が増す同僚への手当なども合わせて検討していく必要があるだろう。