二人以上世帯の消費支出の概観~「メリハリ消費」継続の中に前向きな変化の兆しも
まず、二人以上世帯の消費支出全体と、その内訳として大分類で示される費目の状況を確認する。
二人以上世帯の「世帯消費動向指数(2020年の二人以上世帯の消費支出=100とした指数)」を見ると、世帯あたりの消費支出は2023年頃までは減少傾向にあったが、2024年以降は緩やかに持ち直している。
この動きは総消費動向指数と比べると回復の勢いに欠けるが、両者の集計範囲に違いがある点に留意が必要である。
総消費動向指数は、二人以上世帯に加えて単身世帯なども含めた全世帯の消費支出総額(GDP統計の家計最終消費支出に相当)を対象としているが、世帯消費動向指数は二人以上世帯のみを対象とし、世帯当たりの支出を捉えている。
したがって、二人以上世帯の(世帯当たりの)消費支出は、単身世帯と比べてやや抑制的である。背景には、二人以上世帯では家賃などの固定費の占める割合が相対的に低いため、物価高が続く中で節約可能な支出の余地が大きいことが影響していると考えられる。

二人以上世帯の消費支出の内訳を見ると、2020年以降、減少傾向が続いているのは「食料」や「家具・家事用品」である。
一方で、「交通・通信」は増加傾向が続いており、「教養娯楽」は2023年初頭までは増加、その後は横ばいで推移していたが、足元で再び上昇に転じている。
こうした動きは、2025年7月までの状況とおおむね同様だが、8・9月にかけては「教養娯楽」が上昇に転じている(ただし、今後の動向を慎重に見る必要がある)。
これらの動きからは、コロナ禍の収束に伴って消費行動が平常化する一方で、物価高によって実質的な可処分所得が目減りする中で、消費者が支出先を選別している様子がうかがえる。
すなわち、食料や日用品といった日常的な支出を抑える一方で、旅行やレジャーなどの娯楽的な支出やそれに関連する支出は可能な限り維持しようとする、「メリハリ消費」の傾向が見てとれる。
一方で、足元では「教養娯楽」の支出が増え、「食料」がやや改善していることから、慎重な消費姿勢の中にも、生活全体を整え直そうとする動きが表れ始めている可能性がある。
実質賃金の改善によって直ちに全般的な消費拡大につながるわけではないものの、まずは娯楽関連支出の一層の回復や、これまで抑制してきた生活必需品の支出水準が徐々に正常化していくだろう。
実質賃金自体は依然としてマイナス圏にあるが、まさにその動きが表れ始めている可能性がある。
次節では、大まかな分類では見えにくい変化を捉えるため、景気や消費動向に比較的影響を受けやすい主な個別費目に注目する。