主な個別費目の状況~分野ごとに異なる動き、回復と抑制が並行
総務省「消費動向指数」では個別費目の指数は存在しないため、ここからは「家計調査」における二人以上世帯の各費目の支出額の対前年同月実質増減率を確認する。

1|旅行・レジャー~パック旅行費が大幅増、円安への慣れと合理的な旅行選択
二人以上世帯の「宿泊料」は、コロナ禍の反動増を経て、2024年以降、おおむね横ばいで推移している。一方、「パック旅行費」は、2024年は前年を下回る月が多かったが、2025年に入って以降は改善傾向が続いている。
「パック旅行費」には交通費が含まれ、海外旅行の動向にも左右されやすい。需要自体は堅調であるが円安による割高感から海外旅行を控える動きが続いていたため、全体としては低迷していたと考えられる。
一方で、進行していた円安が一旦落ち着いたことに加え、消費者の間に「円安は今後も続くだろう」との見方が広がったことで、為替の不安よりも旅行機会を重視する行動へと変化していると見られる。
特に2025年8・9月の「パック旅行費」は前年同月比で大幅に増加しており(+70%前後)、国内・海外いずれも支出が増えているが、海外パック旅行の伸びがより顕著である。
背景には、円安への心理的順応に加え、旅行価格の上昇が落ち着きつつあることや、燃油サーチャージ込みの定額プランなど費用感を把握しやすい商品が増えたことがあげられる。
また、インバウンド需要との競合を踏まえ、「早めの予約」や「パックによる確実な確保」といった行動が広がったことが、支出増を後押しした可能性もある。
レジャー関連支出は、2024年以降、前年を上回る月が多い。2024年1月以降のそれぞれの増減率の平均値を見ると、1~2割の伸びとなっている。
先に示した通り、物価上昇により可処分所得に制約がある中で、二人以上世帯では生活必需品の支出を抑える一方、娯楽関連の消費は維持する傾向がある。
パック旅行費をはじめ旅行・レジャー関連支出が堅調に推移しており、特にパック旅行では需要の高まりが顕著である。
こうした動きからは、日々の生活にかかる支出を工夫しながら、楽しみに対しては前向きに選択するという、「メリハリ消費」の姿勢がうかがえる。
