米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は21日、労働市場の軟化を背景に、連邦準備制度理事会(FRB)が近いうちに再び利下げを行う余地があるとの見方を示した。これを受け、市場では12月利下げの観測が再び高まっている。

ウィリアムズ総裁はチリのサンティアゴでの講演で、雇用の下振れリスクが高まっている一方、インフレの上振れリスクは和らいでいると述べた。発言内容は事前原稿に基づく。金利先物市場の動向によると、総裁の発言を受けて12月9、10日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合での利下げの確率は約70%に上昇。発言前は約35%だった。

NY連銀のウィリアムズ総裁

「金融政策は最近の一連の措置以前と比べればいくぶん緩和的になったものの、依然としてやや景気抑制的だとみている」と同氏は指摘。「そのため、政策スタンスを中立に近づけ、2つの使命のバランスを保つために、短期的にはフェデラルファンド金利の誘導目標レンジをさらに調整する余地がある」と語った。

FRB内では、当面の追加利下げの是非をめぐり見解が分かれている。パウエルFRB議長が12月のFOMC会合に向けて合意形成を進めるなか、ウィリアムズ総裁の発言は、追加利下げの可能性がなお残ることをうかがわせる。

ウィリアムズ総裁は、パウエルFRB議長と歩調を合わせる傾向がある。パウエル議長は、10月29日の政策決定後の記者会見を最後に、12月会合まで公の場で発言する予定はない。

クリシュナ・グハ氏らエバコアISIのエコノミストはリポートで、「ウィリアムズ総裁の発言は少なくとも、FRB指導部が利下げをあきらめてはいないことを示唆している」と指摘。「それ以上の意味合いを読み取ることも妥当だとは思うが、確実とは言えない」と記した。

10月会合で2回連続での利下げが決定された後、一部の当局者は3回目となる12月の利下げに対して反対ないし慎重な姿勢を示している。21日も、2人の政策当局者がそうした認識を示した。

ダラス連銀のローガン総裁は、スイス・チューリヒでのイベントで、「これまでに2回の利下げを実施した。この状況では、インフレが想定以上に速く鈍化する、あるいは労働市場がより急激に減速するという明確な証拠がない限り、12月に追加で利下げを行うのは困難だと考える」と述べた。

またボストン連銀のコリンズ総裁は、ブルームバーグのポッドキャスト番組オッド・ロッズで、政策金利の据え置きが「当面は適切」になるとの考えを示した。さらに経済専門局CNBCとのインタビューでも同様の見解を表明。今週発表された9月の雇用統計について、労働市場に対する自身の見通しが大きく変化することはなかったと述べた。

 

ウィリアムズ総裁は講演で、「労働市場の冷え込みに伴い、雇用に対する下振れリスクが高まっている一方で、インフレの上振れリスクはやや後退しているというのが私の認識だ」と述べ、「関税による二次的影響の兆候がない状態では、基調的なインフレ率は引き続き低下傾向にある」と指摘した。

総裁は、貿易関税が現在のインフレ率を0.5-0.75ポイント程度押し上げている可能性が高いとしつつ、関税が二次的ないし波及的な価格上昇を引き起こす兆候は見られないと付け加えた。

ミシガン大学が21日に発表した11月の消費者マインド指数は、過去最低近辺に落ち込んだ。生活費の高騰や雇用に対する不安が根強いことが示された格好だ。

一方、9月の米消費者物価指数(CPI)が前年同月比3%上昇となったことが、一部当局者の懸念材料となっている。

同総裁は、インフレ率を目標の2%に戻す必要があるとしつつ、労働市場に過度な負担をかけずにその水準を達成することが重要だと述べた。

原題:Fed’s Williams Says He Sees Room for Rate Cut in ‘Near Term’ (2)(抜粋)

(ウィリアムズ総裁の発言のほか、ダラス・ボストン連銀総裁の発言を加えます)

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.