はじめに~実質賃金はマイナスだが、個人消費は緩やかな改善傾向が継続
個人消費は緩やかな改善傾向が続いており、2025年7月以降はコロナ禍前の2020年2月の水準を上回って推移している。
実質賃金は7月にわずかにプラスへと転じたものの(消費者物価を総合指数で計算した場合)、8月以降は再びマイナスへと転じた。
9月の実質賃金(速報値)は、持ち家の帰属家賃を除く総合指数で計算した値では前年同月比▲1.4%、総合指数では同▲1.0%を示している。
昨年も実質賃金が一時的にプラスに転じた時期があったが、消費の回復は鈍く、消費者は慎重な姿勢を崩さなかった。すなわち、収入の一時的な増加に安易に反応するのではなく、将来を見据えて支出を抑制する傾向が続いていた。
こうした行動様式が定着していることから、2025年に入って実質賃金の減少が続く中でも、個人消費は賃金動向と必ずしも連動せず、底堅く推移してきたと考えられる。
また、今年7月に見られた実質賃金の一時的な改善局面でも、消費者の慎重さは続いており、食料や日用品などの生活必需品の支出を抑える一方で、娯楽や体験などの支出は維持する「メリハリ消費」の動きが確認された。
こうした状況を踏まえ、本稿では、総務省「家計調査」を基に、コロナ禍以降から2025年9月までの二人以上世帯(世帯の過半数を占める)の消費動向について分析する。
