世界最大のシェール生産地を悩ます“汚染水”

アメリカのパーミアン盆地は、世界最大のシェールオイル生産地であり、この10年間でアメリカの石油産業と経済に革命をもたらしました。

その規模はOPEC加盟国のイラクとクウェートを合わせたほどで、アメリカのエネルギー安全保障を支える心臓部と言っても過言ではありません。

この盆地の地下は、様々な種類の岩石が幾重にも重なった、まるでケーキのような地層をなしています。

石油・ガス会社は、水圧破砕(フラッキング)という技術を用いて、この岩石の層に高圧の水を注入し、亀裂を入れることで石油やガスを効率的に採掘してきました。

しかし、この繁栄には大きな代償が伴います。それが「水の問題」です。

パーミアン盆地では、1バレルの石油を採掘するごとに、その3倍から5倍もの「廃水」が発生します。

この「廃水」の塩分濃度は海水の5倍にも達し、採掘時に使われた化学物質や、石油・ガスの残留物、さらには重金属や自然由来の放射性物質まで含む、極めて有害な液体なのです。

これまで、事業者たちはこの膨大な量の廃水を、地下深くの地層に再圧入することで処理してきました。

しかし、その行為が、思わぬ形で大地を揺るがすことになります。

これは、現代のゴールドラッシュとも言えるアメリカのシェールオイルブームがもたらした、深刻な環境問題の最前線です。