噴き出す“廃水間欠泉” 退治できない「ゾンビ井戸」

浅い層へ大量の廃水が注入されるにつれて、今度は地表近くの地層の圧力が異常に上昇し始めたのです。

そして、行き場を失った圧力は、最も抵抗の少ない経路を探し求めました。

その経路こそが、過去に掘られ、今は使われずに放置されていた何千、何万という古い井戸だったのです。

「私はゾンビ井戸と呼んでいます。本来は死んでいるはずなのに、ゾンビのように墓から蘇り、退治できないからです」。

弁護士のサラ・スタグナー氏は、この現象をそう名付けました。

彼女が調査する現場では、地下700メートルにあるはずの原油が、黒く臭い液体となって古い井戸から地表に漏れ出していました。

浅層に過剰に圧入された廃水が、地下の物質を押し上げ、古い井戸の隙間から噴出させていたのです。

スタグナー氏は、パーミアン盆地の現状を「巨大なケーキ」に例えます。

「何度も突き刺されて、もろくなったケーキです。そのケーキから石油というクリームを取り出そうとしますが、それには有毒で汚い水が混じっています。その廃水をケーキの浅い層に注入しますが、その層は大量の水に慣れていません。」

「浅い層には、過去に掘られた無数の井戸というストローが突き刺さっています。圧力は最も抵抗の少ないストローを探し、結果、今やケーキは大惨事。あちこちで崩れたり、隆起したり、層の間からクリームが噴き出したりしているのです」。