はじめに
当研究所では「人口減少時代の未来設計図~社会・経済、そしてマインドの変革~」をテーマに、人口問題へのリサーチを強化している。このレポートではまず、日本の人口減少が進み死亡者数が増加する状況を概観する。次に、死亡場所の経年変化を整理し、2010年頃から施設死・在宅死の割合が高まる傾向を確認する。そして、施設死や在宅死が増加する理由を分析する。在宅死の増加については「孤独死」と「在宅看取り死」のどちらの影響が大きいのかも検討したい。なお、人生の最期の迎え方は一人ひとりの意思と尊厳において決定されるべきものである。本稿では大局的な死亡場所割合の傾向などを示しているが、決して特定の最期の迎え方を称揚・棄損するような意図はなく、人生の幕の下ろし方に関する多様な価値観・考え方などを進めたり退けたりするような意図もない。
進む人口減少と「多死時代」の到来
日本の人口減少が止まらない。国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」によると2025年の推計日本人人口は1億1,892万人だが、2050年には9,258万人まで減少し、2,634万人減る見込みだ。
人口減少の理由は出生数より死亡者数が多いことだ。下の図表は厚生労働省資料などを用いて2000年から2050年までの日本の日本人出生数および死亡者数を整理したものである。2005年、統計開始後初めて出生数を死亡者数が上回った。その後、死亡者数増加と出生数減少が進み、2025年の人口自然減少数(死亡者数から出生数を引いた数字)は95万人を超える見込みだ。

死亡者数は2040年頃の約168万人をピークにその後は減少する見込みだが、2025年から約25年間では毎年約160万人が亡くなると推計されている。日本が直面する人口減少時代は「少産時代」「多死時代」と言い換えることもできそうだ。
