(2)私立大学の動向~過半数が入学定員割れ

そこで、私立大学の入学志願動向についてみてみよう(資料2)。日本私立学校振興・共済事業団(以下、私学事業団)の調査によると、学生の募集定員に満たない入学定員割れ(入学定員充足率100%未満)の私立大学の割合は、18歳人口がピークだった1992年度の7.1%から2024年度には59.2%と上昇傾向にあり、2校に1校以上が定員割れしている。1989年度の調査開始以降、過去最多を更新する結果となった。なかでも入学定員が1,000名を超える大規模な私立大学では、入学定員充足率が100%を超えているものの、600名未満の中小規模大学では70~80%台で、さらに規模が小さいほど充足率は低い傾向にある。また、資料2には含まれていない私立短期大学では、2024年度において91.5%が定員割れとなっており、深刻な状況が続いている。

では、私立大学の定員割れが続くと、何が起きるのだろうか。特に私立大学は国立大学と比べて学生納付金(入学金や授業料等)に依存した収入構造となっており、主な収入源となる学生納付金が減少することで、経営に悪影響を及ぼすことになる(注2)。例えば、2022年度決算において、私立大学を運営する全国の学校法人のうち、101法人が債務超過等により経営困難な状況にあり、うち16法人が自力での再生が極めて厳しい状態との報道もある(注3)。

私学事業団が、私立大学や私立短期大学の5年後の経営状況について、運営する学校法人に聞いたところ、「やや厳しい」と「厳しい」を合わせた回答は増加傾向にあり、2023年度で私立大学の約7割、私立短期大学の約8割となっている。なかでも「厳しい」との回答が私立大学で約2割、私立短期大学で約4割に至っている(資料3)。

こうした経営環境の悪化を鑑み、「中間まとめ」では「これから先の急速な少子化は、中間的な規模の大学が1年間で90校程度、減少していくような規模で進んでおり(注4)、これまでのような進学率上昇による入学者の増加を望むことは難しい。この危機に併せた対応をしなければ、今後は、定員未充足や募集停止、経営破綻に追い込まれる高等教育機関が更に生じることは避けられない。」と言及している。まさに大学経営の持続可能性について強い危機感が示されたといえよう。