「抱っこしますよ」の声かけ 大人の都合で無断でやらないことの大切さ

ーーバウンダリーを意識しすぎるくらいとは、具体的にはどうするのでしょうか?

「一つは声かけです。まだ話せない子どもの場合は、同意を得るのは難しいですが、それでも声をかけましょう。

例えば、大人の都合で移動させたいとき、無断で抱っこせずに『ちょっと抱っこしますよ』と言ってから抱っこをする。お風呂に入って体を洗うときには『洗うね』と声をかけてから触る。オムツ替えるときには『ちょっとオムツ見せてね』と声をかけてから外す、といった具合です。

もちろん、お話ができる段階になってからも声かけは続けます。

私の知り合いは、3歳の娘に『抱っこしてもいい?』『手を繋いでいい?』などと毎回確認をしているそうです。たまに『いまヤダ!』などと断られることもあるそうですが、親はショックを受けるわけでもなく『今はイヤなんだね、教えてくれてよかった。していい時になったら教えてね』と会話しているそうです」

ーーそんな風に小さいころから子どもの気持ちやバウンダリーを尊重することが、なぜ大切なのでしょうか?

「性教育は、人権教育なのだと思っています。自分自身が持っている権利を学び、相手が持ってる権利を学び、そこにある境界線を踏み越えるときにはコミュニケーションを取る。そんな基本的なスキルが根底にあると思うんです。

大人が子どもを1人の人間として尊重し、コミュニケーションをとる。その繰り返しによって、子どもは自分の体に誰が触れていいかは自分で決めるんだ。嫌だって言ったとしても、親や、自分の大切な人との関係性は壊れないんだという感覚を習得していくわけです。

このことは、大きくなったときに、自分が嫌なことには嫌だ、自分の同意を得ずに自分の体に触れてくるのはおかしい、という感覚が当たり前の自分の権利として身についていくことにつながっていくと思います」

子どもの未来の意識のあり様は、現在の大人の意識に委ねられているところが大きいようだ。子どもにどう接するのか、まずは大人が学ぶべきことが多くありそうだ。