トランプ米大統領は25日、カナダからの輸入品に対する関税をさらに10%引き上げるとSNSに投稿した。加オンタリオ州による反関税キャンペーン広告を理由に挙げており、この問題が世界最大級の二国間貿易関係の一つを揺るがしている。

自由貿易主義を提唱するレーガン元米大統領の演説を引き合いに出した同広告はトランプ氏の怒りを買い、数日間にわたり論争が続いていた。

トランプ氏は「事実を著しく歪曲した敵対的行為に対処するため、現在課している水準に加えて対カナダ関税を10%引き上げる」と自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。

大統領は、新たな措置の対象範囲について具体的に示さなかった。米国はカナダに対し35%の基準関税率を課しているが、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の規定の範囲内で生産・出荷されたカナダ製品の多くは適用を免除されている。カナダからは日量数百万バレルの石油が米国に輸入されているが、これには関税は課されていない。

ただし、鉄鋼とアルミニウム製品は免除されず、外国産金属に課されている50%関税の対象となっている。カナダ製の自動車・トラックについても、トランプ政権が外国車の大半に課している25%関税からの免除は部分的にしか認められていない。

オタワのカナダ商工会議所のキャンディス・レイン会頭は声明で「どの水準であれ、関税はまず米国への税であり、次いで北米全体の競争力への打撃だ」と指摘。「今回のエスカレーションの脅しが、外交ルートと追加交渉によって解決されることを望む」とコメントした。

カナダのカーニー首相は、関税引き下げに向けて米国との協議を続けており、オンタリオ州のフォード州首相は24日、カーニー首相と協議した結果、通商協議再開の可能性を探るため、米国での広告キャンペーンを27日から一時停止すると発表していた。

トランプ氏がカナダとの交渉打ち切りを宣言した後、カーニー氏は24日、「米国側の準備が整い次第」貿易協議を再開する用意があると述べ、両国が鉄鋼やアルミニウム、エネルギー分野の協議で前進していたと指摘した。

オンタリオ州のフォード州首相

しかし、米国家経済会議(NEC)のハセット委員長は24日にFOXニュースに対し、カナダとの交渉は「うまくいっていない」とし、トランプ氏が「非常にいら立っている」と述べた。

関税引き上げについて、ホワイトハウスとカナダ首相府、オンタリオ州首相の報道官は25日時点でコメント要請に応じていない。

トランプ氏は、問題の広告が自身のグローバル関税の合法性を巡る米連邦最高裁判所の審理に影響を与える意図で制作されたもようだと主張している。最高裁はこの件で11月5日に口頭弁論を予定している。

トランプ氏は、もし最高裁が国別関税を無効と判断すれば大惨事になると主張しており、米政府が企業に対し数十億ドル相当の関税を返済しなければならなくなる事態を引き起こす恐れがあると警告している。

オンタリオ州政府によるテレビ広告は、米国の関税に対抗するための長期的な戦略の一環であり、レーガン氏の演説を引用した広告が初めてではない。

今回の騒動の前に、オンタリオ州首相の報道官は、同州政府がこの広告を複数のテレビネットワークで数カ月間放映する計画であり、その推定費用は7500万カナダドル(約82億円)になると述べていた。

トランプ氏は23日、この広告を理由にカナダとの全ての貿易交渉を打ち切ると宣言。広告では1987年の当時のレーガン大統領による演説の一部が引用された。自由貿易を擁護し、関税についてはイノベーションの妨げや物価の押し上げにつながり、米労働者の利益を損なう時代遅れの考え方だと訴える内容が使われた。

レーガン氏がこのラジオ演説を行った当時、不公正な貿易慣行が行われている見なした日本製電子製品に対し限定的な関税を課した直後だった。同時に、米議会に対し日本を標的にした保護主義的な貿易法案を可決しないよう呼びかけていた。

原題:Trump Says He’ll Raise Canada Tariff by 10% After Reagan Ad (3)(抜粋)

(詳細を追加して更新します)

--取材協力:Lauren Dezenski、Derek Decloet、Wendy Benjaminson.

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.