「自分が救えなかった…」山上被告に“複雑な思い”

事件が起きたのは2022年7月8日。奈良市内で演説していた安倍元総理。
手製の銃で撃たれ、命を落としました。

現場で取り押さえられ、殺人などの罪で起訴された山上徹也被告。犯行動機として旧統一教会への恨みをあげ、「安倍元総理と教団につながりがあると思った」などと供述しています。
鈴木氏
「僕はペンの力で政治家を追及したかったところを彼は武力を行使してしまった。暴力で命を奪ってしまったというところで、追及対象を奪われた存在でもあるんですよね。その一方で、自分が長年取り組んでいたカルト教団の問題。その被害者が起こした事件というところで、自分が救えなかった被害者による事件だっていう見方も当然できるので、非常に彼に対しては複雑な思いを抱いてますよね」
事件後、富山を含めた全国で信者から選挙応援を受けた政治家と旧統一教会の密接な関係が次々に報じられました。

田畑裕明衆議院議員
「今後団体との関係は一切持ちません」
国会では霊感商法や高額献金の被害者救済法である「不当寄付勧誘防止法」が成立。
ことし3月には東京地裁が教団に対し解散命令を下すなど、事件は社会に多大な影響を与えました。
この事件が起こる9日前、鈴木氏は山上被告からSNSでメッセージを受け取っていました。
鈴木氏
「あの事件からちょうど半年後に山上の弁護人の1人に取材をしていて事務所を訪ねて帰る時に『そういえば徹也さんがこの間の接見の最後に事件の前にエイトさんにメッセージを送ったけど返信がなかったと言ってましたよ』って。ぽろっと言われて。自分がもし彼からメッセージを受けてそれを無視してたんじゃないか。そのメッセージの中に事件を示唆する内容があったら、自分はこの事件を止められた立場だったんじゃないかっていうことで」

結局、メッセージは事件を示唆するものではありませんでした。
しかし――

鈴木氏
「メッセージの中に僕の記事を彼がずっと読んでいたってことが書いてあったんですね。逆に彼が統一教会と安倍晋三という政治家の関係を知ったのはそれを認識したのは、僕の記事だったんじゃないかっていう別の衝撃に襲われたんですね」
この3年間「自分の記事が被告の動機面にどれほど影響を与えたのか」。「もしかしたら犯行を止められたのではないか」と自責の念にさいなまれてきたといいます。
鈴木氏
「非常に特殊な事例になってしまったと思うんですよね。あの第三者的な報道陣、報道する立場から重大事件の犯人の動機面に関わる存在になってしまったというところで、でも逆に言うと、だからこそ自分でできることがあるんじゃないかって思っているんで。それは事実を裁判員に提示して、それで裁判員が判断してほしいなと思っているんですね」










