「前職やってる間に那覇の方に結構行ったり来たりがあったんで」「コロナ禍だったけど、結構レンタカーの送り迎えが多いなぁっていうのは印象があったんですけど」「これレンタカーってちょっと数台、1台2台とかで片手間で始めたりできないのかなぁって思ったのがきっかけでしたね」

コロナ禍で大きく減少したものの、観光需要の回復とともに増加傾向にあるレンタカー。車1台から始められるため参入障壁が低く、小規模な事業者も増えています。

そして、台数の増加とともに、コロナ禍前からの問題が再び顕在化してきています。

▼りゅうぎん総合研究所・米須唯さん
「那覇空港の駐車禁止エリアでのレンタカーの受け渡しが後を絶たない状況が続いております。空港のみならず、周辺の公園であったり、路肩に駐車してレンタカーを受け渡すといった行為も見られているので、渋滞につながってしまったり、といったところが懸念されている課題」

那覇空港でのレンタカー受け渡しは全面的に禁止されていますが、ルールを守らない業者が後を絶ちません。警備員が定期的に巡回し注意を促しますが、別の業者が次々とやってくるためまさにいたちごっこの状態で、那覇空港周辺の渋滞はもはや恒常的な問題となっています。

「観光客の満足度の低下に直結してくる問題で」「レンタカー業界の課題は、沖縄県の観光課題にも直結してくる。しっかり向き合って、課題解決に動いていかないといけない」

中田さんが手がけるサービスは、こうした問題を逆手にとったものでした。

▼沖縄県の小さなレンタカー屋さん・ホワイトワンネットワーク中田裕一郎代表「予約が入るじゃないですか。予約が入ったら、その時点でもう決済がされるんですね。お支払いは完了して、で、その後にお客様の方に自動でメールが返されるんですけど、そのメールの中にリンクがあって、そこからどこに泊まるとか、何時に持ってきてほしいとかっていうのを入力できるんですね」

一般的なレンタカーを借りた場合、那覇空港でのレンタカー受け渡しは認められていないため観光客はレンタカー会社の送迎車などに乗って受け渡し場所に向かいます。そしてそこから手続きを始めるため、車を受け取るまでに2時間以上かかることも。

一方、中田さんが考えたサービスでは、沖縄についた観光客はホテルの送迎バスやモノレールなどを使ってそのままホテルへ向かいます。すると、そこにはすでにレンタカーが届けられていて、いつでも使うことができるというわけです。

「旅行で福岡行った時に、レンタカー借りる時に、(空港から)近いけど、行ってから出発するまで、1時間半ぐらいかかるイメージがありまして」「もう子どもが不機嫌になるわけですよ。なんか暑いとか喉が渇いたとかなって」「待たなくていいっていうレンタカー屋さんがあったらいいなみたいな感じですね」

最初1台からスタートしたレンタカー業ですが、順調な業績に合わせて台数を増やしていきます。すると、次に直面したのが人手不足の問題でした。そこで中田さんがひねり出したアイデアが、ある業界の隙間時間をうまく活用する方法でした。

週末金曜日の夜。折り畳み式の電動バイクを使ったサービスを手掛ける運転代行のスタッフが客の車を届けた後に向かうのは・・・

▼「運転請負のポケバイ」スタッフ
「次は“レン配”と言って、レンタカーを拾ってホテルに運ぶという業務があるのでそれに行ってきます」

糸満市を拠点に“運転請負業”を営むこちらの会社では、待機時間などを活用して中田さんから依頼されたレンタカーをホテルに運ぶ業務を受託しています。

▼「運転請負のポケバイ」金城弘樹代表
「私たちも業務の中で待機時間というのは必ず発生するので、その待機時間を使ってレンタカーを移動するという仕事ができるのは非常に効率的」

さらにレンタカーの受注や予約の管理などを担う業務もコールセンターに委託。人手不足の問題を解消しつつ、協力企業も隙間時間に利益を生み出せるまさにWin-Winな仕組みを生み出しました。

今60台あるレンタカーを100台まで増やすことが当面の目標だと語る中田さん。さらにその先を見据えています。

――今回、取材を受けることで模倣する事業者も…?

▼沖縄県の小さなレンタカー屋さん・ホワイトワンネットワーク中田裕一郎代表
「僕それ、いいことだと思うんですよ。もちろん真似されたらあまりいい気はしないですけど。だけど、それって逆をいったら、このアイデアいいじゃんって思ってくれたってことなので。それで良い変化が起きて、沖縄のレンタカー業界がちょっといい方向にいったらいいんじゃないかなと思いますね」

逆境をチャンスに変え、新たなアイデアで道を切り開く。中田さんの歩みはまだまだ続きます。