奥深い焙煎の世界

こうしたスペシャルティコーヒーが完成するまでには長い道のりがあります。大分市田原の「レゴリスコーヒー」では毎月2トンほどの豆を自家焙煎。焙煎士の浅井寿さんは、上位1%という最高品質の生豆を生産地から直接仕入れ、さらに品質を高めるため、豆の状態を細かくチェックします。

浅井寿焙煎士:
「割れていたり、カビに侵されていたりする豆を取り除きます。気の遠くなるような作業ですが、とても重要な部分です」

焙煎は天候や気温、湿度などを考慮して行います。過去の焙煎データを参考にしながら釜の火加減や回転数を調整するほか、ノイズキャンセリング機能を搭載するヘッドホンを装着し、焙煎時に豆が発する音に集中します。

焙煎後のカッピングでは、抽出したコーヒーを勢いよく吸い込み、風味や味わいが販売できるレベルに達しているか最終確認します。

浅井寿焙煎士:
「コーヒーのポテンシャルを残しながらフレーバーを整えるのが焙煎士です。いやな味が残ってるものも焙煎で消すことができるんです。どうにかできるのが焙煎士の仕事だと思っています」

浅井さんは定期的にグアテマラなど海外の仕入先を訪問。経済不安や気候変動に直面する生産者の生活を守っていかなければ、スペシャルティコーヒーを維持することは難しいと考えています。

浅井寿焙煎士:
「いいものだけをただ取るのではなく、もし出来が悪かったとしても自分がなんとか加工することで、違うポテンシャルを導き出しています。継続していくという安心感を共有し、次につなげていくことが大事だと思っています」

生産者と職人の顔が見える“最高の一杯”。深い味わいにはたくさんのこだわりと多くの人の思いが詰まっています。