食べたいものが食べられない我が子のために…特技を活かして

長崎市 琴海大平町で、週末のみ営業しているパン屋『さんたハウス』。

店主の山川 ほづみさんです。
低脂肪パンを作るのには理由がありました──

山川 ほづみさん:
「(低脂肪のパンは)胃腸に優しい。“潰瘍性大腸炎”や“クローン病”の方、“脂質制限”のある方に、と思って始めた店です。
1日の(脂質の)摂取量を“30g未満”に抑えないといけないという方もいらっしゃる。普通に1個で30g行くパンもたくさんあるので、パン1個で1日分を超えてしまうときもある」
20年ほど前から、パン作りが趣味だった山川さん。
脂質“10g未満”の低脂肪パンを作るきっかけは、5年前のことでした。

山川 ほづみさん(自宅での料理の様子):
「3人分です。主人と子どもと私です」

5年前、当時高校生だった山川さんの子どもは、国の指定難病『潰瘍性大腸炎』を発症。食生活の変化を強いられることになりました。
『潰瘍性大腸炎』は大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる原因不明の炎症性疾患です。
脂質や食物繊維が多い食事は “下痢”や“腹痛”を引き起こす難病で、患者は国内に22万人以上いるとされています。
山川 ほづみさん:
「昨日まで学校に行っていたのに、急にみたいな感じですね」

食卓に並ぶのは“低脂肪”、そして野菜の皮などを剥き、食物繊維を減らした“低残渣”の食事です。

山川 ほづみさん:
「揚げ物はダメです。焼きます。海藻とか昆布とか海苔とかダメでしょ。油とか残渣、繊維質ダメ。いろいろ考えていたら、もう食べられるものが限られて」
食べたいものが食べられない。
子どものために何かできないか──
こうして生まれたのが、特技のパン作りを生かした“低脂肪パン”でした。

山川 ほづみさん:
「表計算ソフトを使って、全部(数値を)入れて、どこまで減らしたら1個あたりの脂質が“10g未満”になるのかっていうのを計算します」