■ 満足したら終わり “変化への対応”を常に課す

戦闘機パイロットの中から、さらに選び抜かれた者だけが、F-15の操縦桿を握ることを許されます。
同期の中の “わずか1割” ──まさにエリートの中のエリートです。
朝長さんは26歳で “イーグルドライバー” になりました。

朝長 1等空佐:
「F-15は自分の中心。生活の中心であり、仕事の中心であり、仲間との中心であり、全ての中心にF-15が存在している。だから“軸”かな。

戦闘機の場合は、『敵の航空機と戦闘する』のが目的なので、キャノピーは一点の曇りもないように磨き上げられなきゃいけないのね。本当に何時間もかけて磨いてくれる整備員がいたりとか。そういう人との関りを作ってくれる。
日常生活でも『明日F-15に乗らなきゃいけない』っていうのがあるから身体のケアもするし、食事も気を付けるし、当然、お酒の量もコントロールするし。変な話、トイレのコントロールもしないといけないのよね」

航空学生の功績をたたえる顕彰館には、パイロットの装備品などが並んでいます。

朝長 1等空佐:
「今、現行のスタイルの(パイロットスーツ)がこれかな。これが『耐Gスーツ』と『酸素マスク』
上空に上がれば上がるほど空気が薄くなるので、(酸素マスクで)空気を吸わないといけない。1万フィート(3,048m)以上、3万フィート、5万フィートと上がるとHYPOXIA(ハイポキシア 低酸素血症)っていって、脳内に酸素が無くなって、知らないうちに気絶をしている。
3万フィート、5万フィートを飛ぶ戦闘機乗りには、これが命綱。

恐怖感は正直、多分みんなあると思う。
じゃあ、その恐怖感をどうやって克服するかって言ったら“準備”(しかない)。
ちょっとでも不安があったら、それは物凄い恐怖となって自分に返ってくるので…。みんな恐怖はある…だけど、恐怖心がないと安全は保てない」

強靭な体力、精神力が求められる戦闘機のフライトは、通常1時間が限界です。
朝長さんは、26歳から20年間乗り続け、3,196時間の飛行記録を達成します。
F-15のパイロットが、ラストフライトを迎える年齢の平均は40才。朝長さんは46才までイーグルドライバーであり続けました。

朝長 1等空佐:
「 F-15のパイロットになりました──“だからいいんです” じゃなくて…次は “F-15のパイロットとして何をしなきゃいけないんだ”(と考える)
それができるようになりました──そうしたら“自分ができた”だけじゃなくて、自分が得たものを、“どうやって後輩に伝えていくか”(と考える)
さらに後輩に伝えたことを、“後輩たちが正しく その後輩たちに伝えているのか”を監督・指導しなきゃいけない。
どんどん自分を変化させて(次々に)要求に対応させていく(ことが大切)」