「あまりにも幼稚かつ自己中心的」

12月5日、被告はグレーのセーターにジーンズを着て、再び法廷に姿を現し、ゆっくりと証言台のいすに腰掛けました。

そして、裁判長が判決を読み上げました。

​「主文 被告人を懲役3年に処する。未決勾留日数のうち40日をその刑に参入する。この裁判確定の日から5年間、その刑の執行を猶予する。被告人をその猶予の期間中、保護観察に付する」

被告はじっとうつむいたまま判決を聞き、裁判長が主文を繰り返すと、顔を上げてうなずいていました。

裁判長は量刑の理由について「犯行態様は高齢者に対するものとして相応に強度で、暴行を受けて畏怖した母親に対し、強烈な文言を述べただけではなく、眼前に凶器を置いて、強く自殺をそそのかしたもので、態様は悪い」と指摘しました。そして、カレーをおすそ分けされたことなど、犯行に至る経緯や動機については「あまりにも幼稚かつ自己中心的で、酌むべき点は全くなく、意思決定そのものは強い非難に値する」としました。

その一方で「本件は偶発的な事案で、これまで母親を肉体的、精神的に虐待した挙句に自殺へと追い込んだという悪質な経緯がある事案とも異なる点を踏まえる必要がある」とし、他の自殺教唆事件と比べて「重い部類には属さない」と述べました。

そして「被告人が前科がないこと、事実を認めて反省の態度と更生の意欲を示していることを相応に考慮し、社会内における更生の機会を与えるべき」としました。

「断酒を約束してください」保護観察へ

判決の読み上げが終わると、裁判長は執行猶予と保護観察について、被告に説明しました。裁判の中で酒を断つと誓っていた被告に対し、裁判長は「断酒をしてください。保護観察で約束事として設定してください」と求めました。被告は「はい。ありがとうございます」と答え、閉廷すると、裁判長と弁護士、検察官に向かってそれぞれ一礼しました。

判決の後、被告と言葉を交わした弁護士は「実刑もありうる事件だったので(被告は)ほっとした表情をしていた」と記者団に話しました。弁護側は控訴しない方針です。