「本当に母には残酷なことをしてしまった。長生きしてほしかった」。
2022年8月、石川県加賀市の自宅で、同居する母親を自殺に追い込んだとして、自殺教唆と暴行の罪に問われた54歳の男の裁判で、金沢地裁は懲役3年・執行猶予5年の判決を言い渡しました。犯行のきっかけとなったのは、被告が幼少の頃から好きだった、母親の手作りカレーでした。
同居の母親(当時78)に「はよ死ねや」
この裁判は2022年8月、加賀市塩屋町の自宅で、当時78歳の母親に殴る蹴るなどの暴行を加えた後、包丁を差し出し「はよ死ねや」と迫ったとして、同居していた54歳の長男が自殺教唆と暴行の罪に問われたものです。
11月25日、金沢地裁で開かれた初公判で、被告は起訴された内容について、裁判長に「間違っている点はないですか」と問われると、はっきりとした大きい声で「ないです」と答えました。弁護側も、起訴内容については争わない方針を示しました。
幼少期から好きだった“母の手作りカレー” 隣人におすそ分けされ激高
検察側の冒頭陳述などによりますと、被告は当時、長距離トラックの運転手として勤めていて、平日は仕事のために家を空けることが多かったといいます。事件の4日前の8月12日から、お盆の休暇のために自宅に戻り、その日に母親にカレーを作ってもらっていました。自宅では酒を飲むなどしてお盆休みを過ごし、13日には母親と共に墓参りにも出かけていました。
犯行当日の16日午前6時ごろ、カレーが全てなくなったことに気づいた被告は、寝ていた母親を起こしてただすと、母親は「隣の人に分けた」と答えます。検察は、楽しみにしていたカレーを隣人におすそ分けされ、粗末に扱われたと感じた被告が激高し、母親に向かって「生き方を正せ」などと暴言を浴びせた後、殴る蹴るなどの暴行を加えたと指摘。さらに母親の謝罪が気に入らず、台所から包丁を持ち出して「はよ死ねや」と迫ったと主張しました。母親はその後、納屋でロープを使って首をつり死亡しました。