格安航空会社「ジェットスター」が高知に就航してから5年が経ちました。現在、高知ー成田間を1日1往復で運航していますが、片岡社長は「今後、複便化を目標とする」考えを示しました。これまでの経緯を振り返りながら課題を探りました。

「およそ1時間のフライトを経て今、高知龍馬空港へ降り立ちました」

2018年12月19日、格安航空会社のジェットスター・ジャパンが高知に就航。成田空港と関西空港を結ぶ2つの路線が開設され、高知の空の新たな時代が幕を開けました。

いずれも1日1往復で、運賃は高知ー成田間が片道4990円から、高知ー関空間が片道3990円からという魅力的な料金設定で、就航初日の空港は賑わい見せました。

(ジェットスタージャパン 片岡優 社長)
「旅行だけではなくて交流人口の拡大ということに我々も尽力したいと思ってます」

(尾﨑正直 知事(当時))
「航空路線というのはみんなで乗って育てていこうとよく言われますけどね、ほんとに多くの皆さんにご利用いただきたいと思いますね」

県は就航の2年前、2016年から積極的な誘致活動を展開。就航後もおよそ5年間、着陸料を全額補助してきました。一方ジェットスターは地元自治体とタイアップして「高知のアウトドア」をPRしようと、メディアを対象にした体験会を企画するなど利用促進に向けた積極的な取り組みを進めてきました。

(ジェットスターPR担当)
「関東とか関西のアウトドア好きのお客様が高知を冬楽しめるアウトドアスポットとして認識していただいて、高知に足を運んでいただくというのを期待しております」

就航から1年、成田線の利用客は順調に推移していましたが、関空線の座席利用率は最高で2019年8月の68%と伸び悩みました。さらに追い打ちをかけたのが新型コロナの流行です。ジェットスターは2020年4月10日から3か月間と翌年1月18日から2か月間、高知発着の全便を欠航に。関空線は需要が見込めないことから運休が続き、2021年3月27日に廃止されました。

(県の担当者(当時))
「ジェットスターさんの関西線については県が長年に渡って誘致してきた路線でございますので、一言で言うと残念と」

就航から5年、昼過ぎに成田を出発する便と夕方に成田に到着する、1日1往復の運航ですが、座席利用率はコロナ禍を含めても平均で7割を超えています。

利用客からは魅力的な料金設定はもちろん、成田から東京都心へのアクセスは気にならないという声が多く聞かれました。

(利用客)
「安かったから(利用しました)」
「成田なんで多少そこ(都心のとの距離の遠さ)はあるんですけど、それはうちは大丈夫かなと思っている。高知はいろいろいいところがありましたのでまた行きたいなと思うのでまた別の季節とかに来たいなと思います」
「わざわざ(成田まで)行ってジェットスターに乗るというぐらい使います。もうちょっと便数が増えてくれるとほかに選択肢が増えるので助かりますね」

県はこれまで、便のPRとしてラッピングした路面電車を走らせるなどの利用促進策を進めてきていて、「新しい人の流れが生まれている」と捉えています。ただ、利用客については限定的だとしています。

(県交通運輸政策課 別府慶一 課長)
「乗られてる方というのは限定的でございまして、高知県民の方でもLCCそのものを知ってる方とか乗ったことがある方というのが県民世論調査でも11%ぐらいしかいらっしゃらないので、搭乗率自体は好調なんですけどもより多くの方に使っていただけるようにさらに利用促進にも取り組んでいきたいと思っています」

ジェットスター側も高知県からの利用客をいかに増やすかが今後の課題だと考えています。

(ジェットスタージャパン 片岡優 社長)
「どちらかというと首都圏発のお客様が全体の全体の半分以上を占めているような状況ですが、高知県の皆様も首都圏にご旅行、またはご親戚の訪問だとかお仕事等でご利用の際には成田という空港もですね、非常に遠いイメージはありますけども実際には非常に便利になっておりますので、ぜひ一度ご利用いただいて地元の方々の割合を今後増やしていきたいというのも我々ございます」

成田空港には3つのターミナルがあり、去年11月12日時点で国内・海外の115都市に117路線が就航しています。2021年からは顔認証技術を活用した搭乗手続きシステムを導入。自動チェックイン機でパスポートを照合し、顔の画像を登録すると搭乗券やパスポートを見せることなく、スムーズに搭乗できます。ジェットスターでも成田空港に自動手荷物預け機を導入。搭乗手続きもオンラインで行うことができ、非接触型の空の旅を提案しています。

片岡社長は高知ー成田線について今後、一日に複数の便を運航する「複便化」を目標とする考えを示しました。

(ジェットスタージャパン 片岡優 社長)
「お客様の利便性だとかスケジュールを考えますとやはり今後、複便化というのも検討していかないといけないと考えております。現在の路線の収支であるとか、お客様のご予約状況を考えますと1便ではもうすぐ足りなくなるのかなというようなところも我々考えておりますので、まず成田路線をしっかりと維持しながら将来的には増便も検討していきたいなというところでございます」

(県交通運輸政策課 別府慶一 課長)
「より使い勝手のいい路線にしていきたいなと思ってまして、いま路線自体は昼間の1往復という形になってます。どうしてもビジネスで使うとなると1泊2日という形になってしまうんですけども、これを複便化、1日2便飛ばすと朝飛んで夜帰ってこれるということで日帰りの旅行に使えるような形の拡大路線、というところを目指していきたいと。いろんな選択肢が広がるということが大事だと思いますので今の1便だけではなく2便、3便に向けて一緒に頑張っていきたいと考えてます」

片岡社長が成田は非常に便利になっていると話していましたが、都心とのアクセスは上野まで私鉄特急で最短41分、東京駅まではJR特急で最短50分で行くことができます。また、高速バスも東京駅まで最短で1時間程度と早く、10分から20分間隔で成田空港を出発しています。片岡社長は安い料金を提供することで、首都圏に頻繁に行けるようになれば、交流人口は2倍・3倍と拡大するので、今後、LCCとしてその役割を果たしていきたいと話しています。