(福井健人記者)
「コロナ禍に入るまで、産業振興計画にのっとって、県が年度の最初にトップセールスを行っていた場所は、大阪でした。ここは、キタと呼ばれるエリアの中心地、梅田です」

「目の前にはJR大阪駅がありまして、隣接したビルの中にはJRが運営するホテルが入っているんですが、県はこの場所で、毎年ゴールデンウィークが明けたころ、旅行会社や公共交通事業者を対象に、夏から秋にかけての高知観光について魅力を発信していました。ただ一年全体でみますと、そうしたトップセールスや全国メディアを対象にした記者会見を開く主な舞台は圧倒的に東京でした」

「例えば、アリーナクラスの会場で開かれる、全国の自治体や企業が出展する大規模な見本市で、県として面積の広いブースを出展し、そのなかで高知の複数の事業者が、特産品を使った加工品の魅力を発信したり、今回のように、タレントを伴った高知家の記者会見を開いたりして、一年を締め括っていましたので、県外で外貨を稼ぐという、いわゆる地産外商の一丁目一番地は、10年以上にわたって東京だったわけです」

「そうしたなか、次のステージに向けて、県が選択したのは、2025年の万博開催で各方面から期待が寄せられている関西エリアでした。2021年度には、産業振興計画の構成要件となる、関西に特化した経済政策=『関西戦略』を立ち上げるわけですが、実行を前に、大きな壁として立ちふさがったのが、新型コロナウイルスです」

「感染防止対策を最優先せざるを得なくなったことから、具体的な経済政策が思うように進められない事態に陥り、当時の県庁の中では、コロナの収束を待って、守りから攻めに転じようという、『反転攻勢』。この四字熟語が、まるで呪文のように唱えられていたことを思い出します」

(福井健人記者)
「コロナは、今年の5月にようやく、五類に移行したわけですが、その反転攻勢の表れなのか、今年度に入り、関西戦略を確実に推し進めようと県は、一気にアクセルを踏み込みました。私は、東京での取材も経験していますが、それを踏まえても、いま地産外商の軸足は、東京から関西に、完全に切り替わったということを強く感じさせられます」

「例えば6月には、阪神百貨店で物産フェアを開いたところ、日本酒などが飛ぶように売れ、6日間での全体の売り上げは、1200万円に上ったといいます。フェアに出展していた、ある事業者の方に話を聞きますと、売り上げの規模は、高知の店舗での4か月分程度にあたる250万円ほどになったということでした。『大都市圏での販売に自信が持てたので、今後も機会があれば出展したい』と意欲を示していました」

「あべのハルカス近鉄本店では、いまフェアが開かれていますが、こちらも連日盛況で、モノが良く売れていると言います。百貨店では、インバウンドの影響もあって、今年度の売り上げは昨年度より回復していますが、高知のフェアもまた、その一翼を担っているという指摘があります。関西戦略に沿った政策は、このあとも切れ目なく、続くことになっています」

「まず12月には、空の玄関口である伊丹空港と京阪神をつなぐモノレールで、『おきゃく』をテーマにした観光列車を走らせます」

「次に、現在建設が進められている日本郵政公社のJPタワー大阪にまつわるトピックスです。JR大阪駅に直結する梅田エリアの新しいランドマークとして期待されているスポットですが、こちらには来年7月に、商業施設や劇場、ホテルなどが入った大型複合施設『KITTE(キッテ)大阪』がグランドオープンすることになっています。『からふる』では、これまでにもお伝えしてきましたが、県は、この中に、関西初のアンテナショップを出展させることを決めていて、今後、店舗名を公募することにしています」

「県のアンテナショップと言えば、年間4億円ほどを売り上げてきた東京銀座の『まるごと高知』がその代名詞でしたが、県のある幹部は、大阪のアンテナショップについて、『銀座との差別化を図り、関西の人々に喜んでもらえる、西ならではの、特徴のある拠点にしたい』と意気込みを述べていまして、今後は、アンテナショップの動向が、県の関西戦略における最大の焦点となります」

(福井健人記者)
「関西と高知が、これまで以上につながり、人やモノの流れが活発になって、成長した、新しい高知の姿が見えてくるのかどうか。県が、反転攻勢を掲げてきた、政策の行方に注目したいと思います」