東日本大震災の発生からまもなく12年。からふるでは防災をテーマに特集でお伝えしています。今回は、防災製品についてです。高知県内ではその企業ならではの技術や知恵をいかした防災製品が生まれています。

古くから上質な紙を製造し、紙の町として知られるいの町。このまちに1973年に創業、県内唯一の再生紙メーカー「丸英製紙」があります。こちらで作られているのは私たちの生活になくてはならない物。そう、トイレットペーパーです。

トイレットペーパー

丸英製紙が誇るのは長く巻く技術。通常、販売されているトイレットペーパーは、シングルで1ロールあたりおよそ60メートルですが、丸英製紙は200メートルの商品を製造しています。この技術を生かして生産しているトイレットペーパーがいま、注目を集めています。

(丸英製紙 濵田英明 社長)
「(200メートル巻きは)モニターをしてもらったんですが、4人家族でも1週間は十分に使えます。その長尺ロールを活かして備蓄用にしようということでいろんな試験や試行錯誤をしながら10年保証をつける製品を開発しました」

製造のきっかけは一本の電話でした。

(丸英製紙 濵田英明 社長)
「大阪の自治体から要望があって、トイレットペーパーを備蓄していたことが荷崩れで発覚したのですが、カビが生えて濡れたような状態になっていて、これを被災者や住民に配るのは失礼だということありました。(Q.その話を聞いて?)まず作ってみようと」

「災害時の備蓄品」とするには、ある程度長い期間、品質を保ったまま保存しなければなりません。そこで濵田社長が目を付けたのがトイレットペーパーを包む素材。これまでの経験と技術ですでに品質を確立したトイレットペーパーそのものではなく、包装する素材を変えることにしたのです。

(丸英製紙 濵田英明 社長)
「まず空気を遮断しないといけないというところから始まって、フイルムの素材にはこだわりました」

開発したのは、外側から耐ピンホール性ナイロン、アルミ蒸着ペットフィルム、ポリエチレンが重なった、3層構造のフィルム。このフィルムでトイレットペーパーを真空状態にすることで空気や水の浸入を防ぎます。

南海トラフ地震を想定し、津波や長期浸水などにも耐えられるよう水に浸す実験などを繰り返した結果、10年間、品質を保ったまま保存できる商品が完成しました。10年保証が付いたトイレットペーパーは世界で初めてです。

また、去年10月には手のひらサイズの小さな箱に入った、備蓄用のトイレットペーパーも開発。200メートルの製品を作る技術を生かし、1人一週間分、70メートルのトイレットペーパーをこのサイズで完成させました。

箱には、いざという時に役立つ災害用伝言ダイヤルや気象庁のホームページにアクセスできるQRコードが掲載されています。

“使う人のニーズに合わせた商品開発”を。企業として大切にしてきた思いから生まれた防災製品です。

(丸英製紙 濵田英明 社長)
「本当に災害などが起きた際トイレットペーパーって普段何気なく使っていますが毎回不足してしまっているんです。義援物資で災害が起きるたびにボランティアで協力はさせてもらっているが、そこから送ったとしても実際手元に届くのには2・3日、へたしたら1週間くらいかかってしまう。備蓄製品というものはこれがあれば助かるだろう、これがあったらなんとか安心できるだろうという想像をしながら買われるものだと思う。それを実際に災害時などに実現できたら本当に会社冥利に尽きます」