台湾の総統選挙まであと2日ですが、選挙で重要な役割を果たす「地域の代表」らが中国に招待され、今回の選挙で特定候補の応援を依頼された疑いが浮上しています。捜査当局から取り調べを受けたという男性がJNNの取材に応じました。

あさってに迫った台湾総統選。中国と距離を置く、与党・民進党の頼清徳候補のリードが伝えられています。

中国は民進党を「独立勢力」と見なし対話を拒絶する一方、最大野党・国民党とは交流を重ね優遇策を講じるなど、台湾世論を“揺さぶる”かのような対応を続けています。

そしてこれも、世論工作の一環でしょうか。

記者
「いま、台北をはじめ各地で、地域の代表である『里長』に捜査の手が及んでいます」

「里長」は日本の町内会長に近い役割ですが、4年に一度、選挙で選ばれる「地域の代表」です。そんな台湾各地の里長が格安の料金で中国に招待され、見返りとして今回の選挙で特定の候補や政党の応援を依頼されたとして、当局が捜査に着手したのです。

JNNは、台北地検から先月、二度の事情聴取を受けたという当選歴6回のベテランの里長を訪ねました。捜査中ということで、顔や名前を出さないことを条件に話を聞くことが出来ました。

これまで10回以上、去年は6月と10月に招待を受け、上海や南京を訪問したといいます。

聴取を受けた里長
「ひとこと言わせてもらいますが、本当にごく普通の日程で純粋に民間交流です」

去年参加したツアーは、ともに6日間程度。費用は日本円でおよそ6万円から9万円だったといいます。観光地や企業、団地などの見学のほか、上海ガニなどを食べながら意見交換したといいます。

中国側は地域の代表者だけでなく、台湾政策を担当する「台湾事務弁公室」の関係者が常に同席していたといいます。ただ、「一度も政治の話はしていない」と疑惑を強く否定しました。

聴取を受けた里長
「私たちは国家主権やどの政党がどうだとか、そんな話はしません。雑談で中国側に『民進党はどうなんだ?』と聞かれることもありましたが、私は笑ってましたよ」

7000人の地域住民を束ねる里長の男性はこう付け加えました。

聴取を受けた里長
「私たち里長の役割は、住民の問題を解決できるよう支援することです。台湾全体の問題や機密事項なんて解決できません」

一方、台湾のシンクタンクの研究者は、里長は選挙への影響力があり、中国の明確なターゲットだと指摘します。

国防安全研究院 鍾志東氏
「里長は地域の民意そのものです。都会でも田舎でも、比較的簡単に引き込むことが出来る対象なのです」

あと2日、ギリギリまで中国による“揺さぶり”が続く可能性があります。