■宿とともに、人生の第二章へ「好きなことばかりやって生きていくわけにもいかない。葛藤しながら、楽しみながら、取り組んでいく。」
宿の庭には、青い柚子が鈴なりに実をつけている。「梅、柿、柚子、栗、スダチ、かぼす、いちじく、ブルーベリー。楽しいですよ」。林さんも野菜づくりに挑戦し、今までに50種類くらいの作物を育てたそうだ。「ただ、やることが多すぎて(笑)見かねた横のおじちゃんが『野菜はつくらんでいい、うちの畑から取っていいから』と言ってくれて。最近はお言葉に甘えています」。
今は草刈り、椎茸の菌打ち、ハーブに果物の栽培。「ブルーベリーから酵母を起こしてパンをつくったり、伊佐米の米粉を活用してメニューを考えたり。いろいろとやりたいですね。今後は庭に露天風呂やサウナ小屋をつくります。庭の蔵も整備したい」と、宿のアップデートにも抜かりはない。
「生きるのに必死で、あまり何かを考えることなく目の前の仕事に没頭してきた」と語る林さん。
成功もあれば、失敗もあった。ひとりだったら気が楽だったが、今は家族のこともある。この1、2年はいろんな葛藤もあるだろう。今まで経験したことがない人生のステージで、これからどんなことが待ち受けているのか。自分の好きなことばかりやって生きていくわけにもいかない。葛藤しながら、楽しみながら、取り組んでいく。
行きたいなと思ったら、パスポートを手に出かけていた。何も考えずに行動していた、若さがあったと懐かしそうに振り返る林さん。「将来的には海外への移住もあるかもしれない。子どもの成長、タイミングを見て動ける時には動きたいです」と、表情を引き締めた。
冒険心を持ちつつ、日々の暮らしを軌道に乗せて、生業として確立すること。これからの「その火暮らし」は、どんな物語になるのだろう。林さんの第二章は、まだ始まったばかりだ。
(インタビュー:泊亜希子 撮影:高比良有城 取材:2023年)
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