鹿児島県本土最北端に位置し、冬の寒さから「鹿児島の北海道」とも呼ばれる伊佐市。今回の主人公、林峻平さんが手がける「その火暮らし」の宿は、広々とした水田を見渡す小高い場所にある。伊佐市の地域おこし協力隊一期生としての活動を経て地域に新たな火を灯そうと奮闘する林さん。これからの展望など話をうかがった。
※前編の記事はこちらからご覧ください。
■意気込んだ矢先のコロナ禍「さすがに病みそう」
伊佐の自然と食の魅力をたっぷり詰め込んだイベント「サウナーワンダーランド」は大成功。この成果をもとに挑戦したビジネスプランコンテストでは大賞を受賞と、とんとん拍子に来ていた林さん。薪のチカラで地域を熱くし、伊佐の不便を楽しむための拠点づくりに着手する。
不動産屋で売れ残っていたという物件を訪ねてみると、荷物はそのまま、室内をコウモリが飛び回り、雨漏りだらけ…。使えるまでには相当の手をかけなければいけない年季の入った古民家ではあったが、「昔はここで、書道教室を開いていたと聞いて。人が集まる場所だったのもいい」と、契約に至った。

さあ、ここからと思った矢先、コロナ禍が立ちふさがった。やる気と準備は整ったのに、動けない。「さすがに病みそうでした」と、当時を振り返る林さん。地元の飲食店は閑散としている。人吉では大きな水害も起きた。飲食店のテイクアウト情報をウェブサイトにまとめたり、契約した物件を片付けたり。できることをやってはいたが、先の見えない日々が続いた。
「協力隊の終了後はどうする?拠点づくりもこの状況では思うように進まない」。とても困難な時期でした、と当時の率直な思いを口にした。
