「鹿児島の北海道」に縁を感じて
帰るなら九州と決めていた。福岡か長崎か、鹿児島。鹿児島は会社員として最初の赴任地だった。「いつか帰ってきます、とパートさんたちにも言っていたんです」。その言葉が実現したことになるが、伊佐市を選んだのは偶然。移住のリサーチをしているうちに、地域おこし協力隊制度を知った。
どうせなら一からやれるところがいいと、初めて募集するところを探した。そこに出てきたのが伊佐市。「鹿児島の北海道、カヌーが盛んとあって、おお!と思って」と笑顔になる林さん。初めて伊佐市を訪れると、市の担当者が案内してくれた。「担当の方がとにかく温かく熱心でした。地域のキーマンに会わせてくれたり、伊佐の黒豚を食べさせてもらって。胃袋をつかまれました(笑)」。

「民宿に泊まったら、いい意味でカオスでした。地域のおじちゃん、おばちゃんたちと一緒にわいわいして、焼酎も飲み放題。隣のテーブルから料理が流れてきて。人間くさい感じがして楽しそうだな、と」。こうして2018年7月、伊佐市の地域おこし協力隊一期生として、林さんの活動が始まった。
「知り合いばっかり、そういうのが苦手という人もいるが、僕は好きです。言葉は…今でもわからないことがあります。移住当初は菱刈のまごし温泉のすぐそばに住み、温泉でおじちゃんたちとしゃべっていました」。
幸いなことに、林さんが住み始めた集落にはちょうど同世代がUターンしてきた時期だった。「十数年間できていなかった六月灯を復活させるなど、勢いがありました。焼酎の国に来て、毎日酔うのかな?と思っていたけど、そんなこともなく(笑)。飲み会もちょうど良かったです」。
協力隊としての仕事は、観光振興と情報発信。「これをしてください、というのがなかったぶん、自分で探して自分で仕事をつくっていく必要がありました」。そこで最初に立ち上げたのが、ウェブサイト「イサタン」である。伊佐の自然や温泉を体験し、滞在してほしい。そのための情報を取材し、集約していった。
林さん自ら「SUPで川内川を川のぼり」した記録など、イサタンでしか読めない記事が面白い。テレビ番組にも出演し、地域情報の発信に一役買った。自然に親しむうち、これこそ伊佐の魅力満載なのでは?という企画を林さんは思いつく。

