■ハンガリー
ハンガリーでも、難民への支援活動を取材しました。ハンガリーには、60万人以上の避難者がおり、その数はハンガリーの人口を1割ほど増やす規模となっています。
そんななか、首都ブタペストでも多くの支援が行われていました。空港や駅には、ポーランドと同じく、情報センターの案内などが設置されています。
NGO団体のADRAは、複数の難民の受け入れ活動を行なってきました。ADRAは、ロシア軍のウクライナ侵攻があった24時間後には、支援活動を始めました。駅に避難してきた人に声をかけ、必要な支援内容を聞き取り、国境近くにシェルターを設けたりもしました。

当初の避難民は、車を持ち、所持金も持っている裕福な人が多かったと言います。そのため、しばらくシェルターに滞在した後は別の場所に移動しました。しかし、ここ1か月~1か月半の間に避難してきた人たちは、比較的裕福ではない人たちの割合が増えました。車を持たず、バスや列車で移動してきている人たち。その人たちに、中長期的な滞在場所を提供する必要もあります。
親戚を頼ってきた親子。家族と離れ離れになりながらも避難してきた母親。姉妹で避難してきた少女たち。多くの人たちは、これから何をするべきか見通しが立っていません。ただ戦争が終わり、ウクライナに帰る日が来ることを願っています。

ウクライナとの国境沿いの村、ベルグシュラーニに移動すると、複数の支援団体が運営しているヘルプセンターがありました。マルタ騎士団、MEDSPOT、日本のAMDAなどが連携し、それぞれの支援活動を集約させていました。
ヘルプセンターに辿り着けば、食事や飲み物、衛生用品を入手でき、医療を受けることも、休息をとることもできます。ヘルプセンターからは、ブタペストへのシャトルバスが用意されており、避難者は無料で利用できます。

AMDAからセンターに参加している看護師の榎田倫道さんにお話を聞きました。避難者に関する医療ニーズとしては、「外傷」はそれほど多くありません。もともと持っていた疾患の薬がなくなったとか、避難中に体調を崩したという方のほうが多いと言います。しかしそれ以上に多いのが、ストレスによる心身の変調でした。戦争や避難によるストレスで、頭痛や不眠、体の痛みなどを訴える声が多かったそうです。

他にも、避難中に妊娠が発覚した方。避難後にがんが悪化して入院した方。発達障害を持つ子どもで、ストレスで圧迫されてしまっている方。ヘルプセンターはいろいろな相談に対応してきました。
