東京五輪を前に入管収容を強化、29カ月間、自由を奪われた

法務省は難民認定申請の標準処理期間を6カ月と自ら設定している。しかし22年の平均を見ると、1次審査に約33.3カ月、2次審査が約13.3カ月、目標にはほど遠い。

申請者が抱く不安の大きさを関弁護士が語る。「Aさんのケースは国際的に見れば異常とされるが、日本の実務からすれば特別ではない。せめて入管との間に頻繁にやりとりがあれば、棚ざらしにされていないと確認できるが、まったくのブラックボックスなので、ただ待つだけの時間を強いられる

Aさんは9カ月収容された後、仮放免となる。そして15年2月、1回目の難民不認定処分の取り消しを求める裁判を東京地裁に起こした。しかし1審、2審とも敗訴。特に2審では、難民の1、2次審査に何年もかかり、裁判でも時間が経過するうちに、本国の人権状況がどんどん悪化したことから、「不認定後の変化も踏まえてAさんの命の危険を判断してほしい」と訴えた。しかし、判決では「その後の事情は考慮すべきでない。新たな事情は、もう一度、難民申請すれば法相が判断する」と退けられてしまった。

申請から10年近く…、17年11月、東京入管に3回目の収容をされた。

このころ入管当局は東京五輪を理由に「安全・安心な社会の実現のために、退去強制令書が発付されても送還を忌避するなど、わが国社会に不安を与える外国人を大幅に縮減する」方針(入管局長通知)を掲げていた。「送還の見込みが立たなくても、収容に耐え難い傷病者でない限り、送還が可能となるまで収容を継続し送還に努める」(仮放免運用方針)として仮放免を認めず、収容される人が続出、収容も長期化した。Aさんも、この渦に巻き込まれた。3回目の収容は29カ月、仮放免の許可申請は7回はねつけられた。

何の先行きも見えないまま、自由を奪われ、堪え忍ぶだけの日が続く。