「笑顔の総量を増やしたい」商社を辞め起業

―――ブラジルから戻ってきて何か業務を立ち上げようと考えたのですか?
 ブラジルで学んだ良いところと日本の良いところを組み合わせた幼少期の過ごし方の仕組みを作りたいと思い始めたんです。そこで最初は、教育事業を三井物産の中で立ち上げました。その後、さらにテクノロジーを活用して大きく世の中を変えるような教育を作ろうと思ったときに、起業した方が実現により近いかもしれないなって思ったんです。

―――三井物産で仕事を続ける選択肢もあったと思うのですが大きな決断ですね?
 あまり大きな決断とは思っていなかったですね。「起業するんだ!」とか「社長になりたいんだ!」とかそういう思いはなくて、死ぬほど教育を変えたい、何としてでも国民総笑顔量を増やしたい、そのために「教育を変えるんだ!」っていうのが第一にありました。なので、「そのための一番の手段は何なんだろう?」って考えたときに、独立して会社を作る方が夢の実現に一番向かいやすいんじゃないかっていう思いで独立を決めました。ずっと夢の実現に向かって一番良い手段を取ってきたという感じです。

―――夢の実現に一番早い道を考えたら起業だったと?
 何か大きく踏み出しただとか、リスクを取ったみたいなことは、考えていなかったと思いますね。人から笑いを生み出すこと自体が自分自身のハッピーにもつながっていて、人の笑顔の総量を増やすって、とても楽しいことなんだなって思っています。人生をかけるのであれば、仕事を通じて世界の人たちの笑顔の総量を増やすようなことに貢献できれば、自分自身がとてもハッピーだなと思いましたね。

「納得できません」共同設立者の妻が起業に猛反対

―――起業するには仲間も必要でしょうし、苦労はありましたか?
 今のatama plusのAIの根幹を作っているエンジニアは、大学のクラスの同級生なんですが、彼を口説くには奥さんの了解を得なきゃならなくて、奥さんの説得には本当に苦労しました。奥さんは起業には反対で、説得するためにファミリーレストランへみんなで行って朝8時ぐらいから夜8時ぐらいまで、10時間近く「旦那さんの力を貸してください」っていうお願いをして、「こういう事業を作りたい」「こういう未来を作りたいんだ」というプレゼンをし、それでも奥さんからは「ちょっと納得できません」みたいな反対意見をいただきまして。

―――奥さまにしたら生活がかかっているわけですもんね。
 そうですよね。奥さんにしたら「会社は絶対うまくいきますか?」っていう不安ですよね。でも最後は、彼も「自分がやってうまくいかせるんだ」っていう思いを語って、最後はみんなで起業についてなんとか合意に至ったという感じです。それから「atama+」というひとつの教育システム、AIを使った教育システム自体をゼロから作り始めました。