がんが転移し続く治療 それでもひたすら「読み上げる」
田島さんもアプリの実用化に大きな期待をかけて研究に協力する一人。がんは肺やリンパ節に再発や転移し、何度も手術を受けていまも抗がん剤治療が続いている。
ことし2月のある日。そんな闘病を続ける田島さんの姿が、名古屋大学の防音室にあった。
例文をいくつも読んで「電気喉頭」の音声を収録。AIが田島さんの電気喉頭の音を学習し、話している内容を正確に認識できるようにするためだ。
田島さんは防音室で3時間、ひたすら文章を読み続けた。
(田島さん)
「買い物へ出かけるにはまだ早い時間帯であった」(例文読み上げ)
収録の間、日々声の尊さと向き合っている、田島さん夫婦、西尾医師、小林研究員の4人に「アプリ完成」までのいまの気持ちを聞いた。
(妻・鈴子さん)
「声を聞くときっと、落ち着くでしょうね。結婚して30何年だから、早く聞いてみたい」
(西尾医師)
「田島さんが日常生活で『こんないいものあるんだよ』って、周りのひとに自慢するくらいのアプリを作りたい」
(小林研究員)
「再び自分の声で話せるとしたら、めちゃくちゃうれしいと思う。色んな人に話したいっていう気持ちがまた沸いてくると思う。そういったアプリを提供したい」
(田島さん)
「久しぶりの人に声かけられても、今の状態だったら…。親しい人でも会うのがイヤでめんどくさくなってくるのもあるので、それさえなくなれば外にも出られるだろうし、人とももうちょっと話したいと思う機会は増えるかな」