「成長した孫と自分の声で話したい」そんな願いが生きる力に

田島さんには、どうしても元の声で話しかけたい相手がいる。

おととし生まれた孫の綾乃ちゃん。

田島さんは声を失う前日に、まだ幼くて話すことのできない綾乃ちゃんに電話で語りかけていた。

(田島さん)
「綾乃ちゃん、こんばんは。じいちゃん本当の声でしゃべるの最後だからね」

そして、このアプリの研究のためにも自分の声を残していた。

(田島さん)
「13時40分発ワシントン行き144便になります」(例文読み上げ)

たくさんの例文を読み上げる中、自分の声で残しておきたかった家族へのメッセージも。

(田島さん)
「いつも心配かけてほんとすみません。お母さんの鈴子さんもほんといつも、心配ばかりかけてすみません」

声を失って1年3か月となったことし5月。

開発中のアプリで、初めて田島さんが自分の声を作ってみる段階を迎えた。

(西尾医師)
「実際使ってみてどうなのか、まだ誰も試したことがないものだから。使ってみていまいちこれ使えないということも十分あると思うので、その感想を聞かせてもらおうかなと」

(小林研究員)
「田島さんが納得するラインが本当のオッケーラインなので」

あのときの家族へのメッセージを、もう一度電気喉頭とアプリを使って話すと…。

(田島さん)
「いつも心配ばかりかけてすみません」

アプリから再生されたのは、田島さんそっくりの声。

(田島さん)
「電気喉頭とは全然違う。人間の声これだったら。今の状態だと録音や停止のボタンを押して会話が途切れるから、今の段階で使うのは難しいね。でも声はこれでほとんどOK」

以前のように家族と話せる日がきっと来る。

そう信じて、今を生きている。