当時、美枝さんの介護にあたった職員たちが記入したケース記録がある。

ベッドから転落した翌日の6日13時12分「肩呼吸ぎみ」。さらに、16時30分には「肩呼吸でしんどさあり」と記録されている。
「肩呼吸」とは呼吸困難が強度になった時に起こる呼吸で、末期の状態などにも見られる症状だ。

また、同じ日の17時30分から18時にかけて「喘鳴あり」と記録され、それが翌7日も続いている。「喘鳴(ぜんめい)」とは気管支が狭くなり、「ゼーゼー」という異常な音を出し、呼吸困難になることだ。

当時、美枝さんの状況を見ていたという施設の元職員から話を聞くことができた。
施設の元職員「肩で息しているのは覚えています。足も少しは動かしておりましたけど、あんまり動かなかった」

美枝さんがベッドから落ちた2021年の7月、世の中はコロナ感染拡大の真っ只中だった。施設での面会も一時中止になったが、息子の要望で短時間だけ会うことが許された。
転落事故から2日後の7月7日、夫婦で会いに行くと…
福井清美さん「頭にお椀を被せたぐらい、こんな(腫れた)頭になっていました」

その4日後、美枝さんは亡くなった。
「特養で見る状態ではない」疑問残る現場の対応市は虐待認定
日本高齢者虐待防止学会の副理事長・遠藤英俊医師は、記録を見る限り現場の対応に疑問があるとした。
日本高齢者虐待防止学会 遠藤英俊副理事長
「肩呼吸と、ここでいう喘鳴というのは今までなかった症状なので、おかしいと思わないといけない。少なくとも特養で見る状態ではない。激変している、悪化している」

美枝さんの死について、これまで福井さんは市に何度も問題を告発してきたが、思うような進展は得られなかった。
だが、2023年3月、ようやく市は美枝さんに対する虐待を認定した。市から説明を受けた際、福井さん側が証拠として記録した映像がある。