ひとつだけ、僕が学生時代に考えていたこと、経験してきたことを話しをさせてもらいます。

 僕は大学に、学校の先生になりたいと思って、教員養成大学に行きました。ところが、どうしても野球をやりたいっていう中で、なかなか練習する時間、野球部もありましたけれど、週に2回アルバイトしないと学生生活を送れないような野球環境であって、どうしても自分の夢が捨てきれず、プロ野球選手になりたいとずっと大学時代も思っていました。

 ですから、授業の合間に一人、ウェイト場に行って90分間ウェイトトレーニングをやって、また授業に戻る、そのような生活を一人でしてました。けれども、周りからは「お前何やってんねん」みたいな見方をずっとされていました。

 ただ自分では、やらないで諦めたくないなというのがすごくありまして、ずっと続けて、大学4年が終わるときにプロテストを受けました。今はテスト生っていうのはないんですけど、テストを受けてプロ野球に入っていったという経験があります。

 ですから今回例えばWBCの何試合かはみんな見てくれたかなというふうに思いますが、あれだけの一流といわれる人たちが全力を尽くして、あれだけ頑張ろうとすると、多くの人に感動を与えられるという、そういうものもみんな感じてもらえたというふうに思います。

 ただ、そこに至るにあたって全員が才能豊かだったのかというと、決してそんなことはないんだろうと思います。

 誰にもわからない努力、頑張り、そういったものをずっと続けることによって全員が、あそこに立って、大好きな野球を精いっぱいやって、これだけ日本のみなさんに喜んでもらえる。


 僕も経験しましたが、勝った瞬間、意外と冷静な「あ、勝ったんだな」くらいな感じだったんですが、日本に帰ってきて子どもたちであったり、多くの人たちが「感動したよ!」って。

 人が喜んでくれるというのは、やっぱりこんなに嬉しいことなんだなというふうに思いました。誰かのために頑張れるというのは、本当にみんなが思ってる力がそのまま引き出される、そんな感じがします。