ロシアがウクライナに侵攻して1年。ロシア側から見る今回の戦争を、“プーチンの頭脳”ともいわれる極右思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏が日本メディアに初めて語った。3回シリーズの中編は、プーチン大統領の評価と、欧米には見えていないというプーチン大統領の二面性について聞いた。(前編後編を読む)

太陽のプーチン(愛国者)と月のプーチン(経済優先)

ーープーチン大統領についてご意見をお伺いしたいです。特別軍事作戦開始前と開始後のプーチンとプーチンの活動の評価についてお伺いします。
 
これはかなり長い話になりますね。私は「プーチン対プーチン」という本を書きました。ちなみに、日本で私の本の和訳が出版されていないのはとても残念に思います。(本が出版されれば)日本社会がロシアの状況をより理解できたと思います。私の哲学の論文の和訳を公開しているURLを送りました。今は第4政治理論のウエブサイトの日本語版を作っているところです。私の本の和訳を出す価値があると思います。
 
「プーチン対プーチン」という本を15年前に書いたが、この本はいろんな言語に翻訳され欧米でも出版されました。この本の中にすべてが書いてあります。この本を読めば今起きていることに驚いたりはしていませんでした。

本の中に私はプーチンのジレンマについて書きました。プーチンは二面性を持つ政治家であり、正反対のパラダイムに基づいています。一方では彼はロシアの愛国者です。これは重要であり、これが彼のアイデンティティの最重要なポイントです。それを私は「太陽(陽)のプーチン」と呼びます。
 
大多数の声に耳を傾けるプーチン、ロシア歴史のロジックを理解しているプーチン、欧米が押し付けている対立に立ち向かう準備出来ているプーチンです。ロシアの絶対的主権、独立と自由の支持者であるこのプーチンは第2チェチェン戦争以降の期間で明確に存在しています。

この(第2チェチェン戦争以降の)プーチンの活動や判断を追跡し分析すれば、太陽のプーチンに該当します。

「太陽のプーチン」が特別軍事作戦を開始し、地理政治学を研究しており、スラブ系保守派、ロシアの歴史の正教・帝国主義者の伝統を引き継いでいます。イデオロギーではなく、ロシア国家を強化した者としてスターリンに匹敵すると思います。

この「太陽のプーチン」は一つのアイデンティティです。特別軍事作戦を開始し、それに向けて準備を行い、多極世界を守る必要を理解しているのは「太陽のプーチン」です。しかしもう一つのプーチンも存在します。私が「月(陰)のプーチン」と呼んでいるプーチンです。