「行ってらっしゃい」。15年前の3月11日、夫が出かけるのを何気なく見送った女性。夫は東日本大震災で亡くなり「あれが最後だとわかっていたなら」と後悔する―。「岩手日報」がネットで公開したその動画は「日々を大切に生きることの大事さを教えてくれる」と、道徳の授業で使われるようになった。
動画公開から6年。女性の2人の息子は高校生になった。「あー、あたし頑張ったんだ」。震災からの15年を、家族はどう生きてきたのか。
(TBSテレビ報道局社会部 青木芽生)
「行ってらっしゃい」茶の間で別れた最後
岩手・釜石市の山陰瑠里子さんは、東日本大震災から9年がたった2020年、あの日のことを静かに語りはじめる。その様子を11歳の長男・皇騎くんと10歳の次男・宗馬くんが見守っている。ネットで公開されているある動画の一場面だ。
瑠里子さんは、夫と別れた2011年3月11日の朝のことを後悔していた。
「茶の間で『行ってらっしゃい』って言って送った、それが最後」
夫は帰ってこなかった。8か月後に遺体で見つかった。
「最後だと分かってたら、お弁当作ってちゃんと玄関まで出たかな。車が出ていくまで見送ったかな。その後悔があるから、今この子たちが学校に行くときにそこの曲がり角を曲がるまで見送らないと気が済まないんですよ」
「震災を忘れたり風化してしまったら、死に損じゃないけど、なんであの人は、なんのために死んじゃったんだろう」
茶の間の壁には、瑠璃子さんが皇騎くんを、夫・剛さんが宗馬くんをそれぞれ膝に抱いて微笑む4人の写真が飾ってある。震災発生当時、息子たちはまだ2歳と1歳だった。
皇騎くんが、その写真を指差して言う。
「そこにある写真の感じで誕生日をやったのは覚えてる」
瑠里子さんも、幼い兄弟も、こらえていたものがあふれ出す。
「お父さんと話してみたいね」
1分半ほどのこの動画が、いま、若者たちの共感を呼んでいる。

















