「行方不明の夫を探せなかった―」

あの日の朝、夫・剛さんの背中を何気なく見送ってしまったことを後悔していると動画で語っていた瑠里子さん。後悔のウラには、夫が津波に襲われた後の体験があった。遺体安置所などを渡り歩き、夫を探し続けていたときのこと。

「行方不明になって探しに行ったときに、夫が何を着ていたのか、どんな格好で行ったのか分からなかった。『どんな特徴がありますか』って言われてもこれじゃあ探しようがない。なんでこんなに分からないんだろう。すごくそれが悔しくて」

「自分のような後悔をしてほしくない」。そんな思いで当時、動画の撮影に応じた。

「そのときの時間をしっかり刻んでほしい。そのときでお別れになってしまったときに後悔しないようにしてほしい。明日は何があるか分からない。その時間を大切にしてほしいということは伝えたい」

夫を亡くして以来、周囲の人とのひとときを大事にするようになったという瑠里子さん。息子たちが高校生になった今も、彼らが外出するときは必ず、玄関の外に出て見送ると言う。

皇騎さんに聞くと「寝起きのような状態で玄関から出てくるときもある」と笑って「友達が迎えに来たときは正直やめてほしい」と思わず漏らした。「やめてほしいの?イヤだよ、やめないよ」と瑠里子さん。皇騎さんは「イヤじゃないよ。イヤじゃないけど、友達がいるときとか、わざわざ外まで出て来なくても」と応じる。

母のお見送りに物申す長男・皇騎さん(17)
母・瑠里子さん(48)

「行ってきます」と出て行った人が帰って来ない―。それは瑠里子さんのトラウマになっていると言う。特に息子たちが海に行くのは怖く、友達との海水浴は「やめてほしい」という。