「NPO法人」を隠れ蓑にした「プロ野球応援協会」

「私設応援団」側の抵抗は、その後も続いた。

2004年2月、猪狩らは東京・文京区の「こんぴら会館」に、いわゆる「悪質四団体」を除く私設応援団を集め、説明の場を設けた。悪質四団体を排除した理由と、私設応援団そのものを全面的に排除する意図はないことを丁寧に説明したうえで、今後の条件を通告した。

入場に際しては、▼応援団員の名簿提出、▼迷惑行為を行わないことを約束する誓約書の提出、この二点を求めるという内容だった。

しかし、私設応援団側は強く反発した。

「なぜ個人情報を提出しなければならないんだ」
「球団や球場に、そんな権限があるのか」

出席者の中には、後に警視庁に逮捕される元山口組系右翼団体の塾長や、他の応援団への暴行・恐喝未遂で兵庫県警に逮捕された人物も含まれていた。

その場の空気について、猪狩は後にこう振り返っている。

「足を大きく開いてふんぞり返る態度、鋭い目つき、ぞんざいな口ぶり――。これまで対応してきた何人ものヤクザと、まったく同じだと内心思った」

徹底抗戦の構えを崩さない私設応援団側も、時を同じくして“奇策”に打って出る。

同月、「NPO法人(特定非営利活動法人)」を隠れ蓑にした「プロ野球応援協会」と名乗る団体を設立しようと、大阪府に対し認証申請を行ったのである。

「NPO法人は本来、福祉や環境保護など公益活動を担うための制度であり、反社会的勢力の隠れ蓑となることは想定外だった」(関係者)

提出された「事業計画書」には、「プロ野球発展のためのボランティア活動を行う」など、一見するともっともらしい理念や文言が並んでいた。

しかし、その実態は、これまで繰り返してきた違法行為や不当な影響力行使を正当化し、既得権益を温存しようとする内容にすぎなかった。

猪狩は、その狙いをこう分析する。

「トランペットや太鼓による鳴り物入り応援という“特権”を盾に、これ見よがしに振る舞い、周囲を威圧して事実上の権力を握る。それが彼らの目的だった」
「NPBが、横暴を極め違法行為を重ねてきた私設応援団を排除したにもかかわらず、署名活動まで行って元に戻そうとし、球場を再び違法状態へ引き戻そうと提案しているにすぎなかった」(同書)

猪狩は、「このNPO法人は認証されるべきではない」とする意見書を徹夜で作成し、山口に手渡した。二人は新幹線で大阪へ向かい、日本初の女性知事である大阪府知事・太田房江に、意見書を直接提出したのである。

阪神タイガース優勝で法被姿の大阪府知事・太田房江(当時)(2003年9月16日 TBSニュース)